精神の奥底
54 埋められていくピース
[8/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
彩斗はその姿を見て、やはり普段見せない表情を変えた時にメリーはハートレスに似ているように感じた。
恐らくハートレスをあのまま10歳前後に戻してみると、だいたいこんな顔になるだろう。
逆にあんなハートレスにも少女時代というものはあったのだという当然のことを思い出す。
「でもしぐさが似るってどういうことでしょう?」
「多分、小さい頃からずっと見てるからじゃない?知らないうちに真似をしてしまって癖になってるとか。意味も分からないのに、言葉を真似してみたり。態度を真似てみたり」
「言われてみれば兄さん、ハートレスと皮肉屋なところはよく似てます。特に大人と喋る時の態度はハートレスそっくりですよ」
「確かに彼女が僕の人格形成に悪影響を及ぼしてのは間違いけどね。んっ?おっと」
「どうしたんですか?」
「…いや」
彩斗は蛇口をひねろうとした時、手を通じて嫌な感覚を覚え、少し驚いてしまった。
ひねる力が強すぎて蛇口が壊れそうになったのだ。
それもそのはずで、今日の未明、目を覚ました彩斗は再びトラッシュと電波変換した。
スターダストになると、変身を解除してからもしばらくその力は残存し続ける。
その犠牲が部屋のドアだ。
昨日の夜、普通通りにドアノブに触れ、押すのと引くのを間違えただけで、無残にも蝶番ごと壊れてしまった。
しかしここで蛇口を壊してしまったら、さすがに感の鋭いメリーは昨日の夜、外の空気を吸っていたと嘘をついて電波変換して街に繰り出したことに気づきかねない。
彩斗は一気に力を抜いて、そっと蛇口をひねった。
「回す方を間違えちゃっただけだよ」
彩斗は手早く顔を洗い、メリーと交代する。
そして2人は寝癖を直し、彩斗はシーマスターを腕に、メリーはいつものヘアアクセサリーと巾着袋を身に着けて階段を降りてリビングへ向かった。
「朝から随分と豪華だね。誰が作った?」
「出前」
「なるほど。でも朝から海鮮丼か」
彩斗はテーブルの上に並べられた丼を眺めながら、昨日の夜に買ってきたチョコレートを冷蔵庫から出して、銀紙を破り一口かじる。
正直なところ、彩斗は朝は多く食べれないタイプだった。
施設の朝食も食べ終わるのが一番最後だ。
チョコレートをかじりながら冷ややかな態度の彩斗とは真逆にメリーは目をキラつかせていた。
彩斗はメリーとともにテーブルに座り、ハートレスと向かい合う形で、箸を手にとった。
「いただきます!」
「…いただきます」
メリーとハートレスは海老や刺し身、ウニなどをこれでもかと言わんばかりに乗せた海鮮丼、彩斗はイクラとウニが飯の上に敷き詰められたウニいくら丼だった。
メリーとハートレスは最初に海老を1匹頬張るところから食べ始める。
それに対し、彩斗は手の力を抜き、勢いで箸を折
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ