精神の奥底
54 埋められていくピース
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ドウはミツバがディーラーの孤児たちと楽しそうに遊んでいたのを覚えていた。
正直なところ、警戒された挙句、依頼を受けてもらえないと思ったが、ミツバのところに来てよかったと素直に思うシドウだった。
誰かが部屋に入ってきた。
寝ているのか起きているのか分からない状態で身体の感覚が蘇ってくる。
柔らかな布団と人肌程度の温かい何かに包まれて、極楽と勘違いする程に心地が良い。
だが入ってきた何者かは、耳元で覚醒しかかった意識に呼びかけてきた。
「おはよう、サイトくん」
「ん……おはよう」
アイリスの声で彩斗は目を覚ます。
ゆっくりと起き上がり、頭に血を上らせていく。
隣ではメリーが彩斗と同じく心地良さそうに眠っていたが、彩斗の覚醒に同調する目を覚ました。
「ふわぁ…おはようございます」
「よく眠れた?」
「うん。ここ数日の中では一番寝たって感じ」
「体調は?どこか痛むとか」
「いや、大丈夫みたい。一晩眠ったら大分良くなった」
「メリーさんは?」
「私もすこぶる快調です。昨日までの疲れが嘘みたいですよ」
「良かった」
「いい朝だね、アイリスちゃん」
「気を抜いてるとお昼になっちゃうよ?」
「え?」
メリーがあくびをしながら背伸びしている中、彩斗は恐る恐る枕元のシーマスターを手に取った。
時間は午前10時52分、あと1時間程で正午だ。
「あなたたち、まだ寝てたの?早く起きなさい。朝食の準備はとっくにできてるのよ」
「分かった、分かった、起きるよ。もう少し寝かせて欲しかったんだけど」
「あなたたちが起きないと朝食がいつまで経っても始められないでしょう?」
「僕たちが起きるまで待ってる必要なんか無いさ。勝手に食べればいい。それとも僕たちと一緒に食べたかったのかな?」
「……」
彩斗は少しハートレスに意地悪な顔を見せながら、メリーと一緒に壊れたドアを通って洗面所へ向かった。
ハートレスはいつも通り大した反応は見せなかったが、一瞬だけ少し悔しそうな顔をしたのを彩斗は見逃さなかった。
「朝からいいものが見れた。見たかい、あの顔?」
「えぇ。何だか、ハートレスって時々、可愛いところありますよね」
「だけど不思議だな」
「何がです?」
「ハートレスのしぐさや表情が時々、すごく君とそっくりなんだ」
「…それって喜んでいいことですか?」
「いいと思うよ。実際、ハートレスは多分、フランス系かドイツ系か...皮肉屋なのを目をつぶれば結構な美人だ。そんな彼女に似てるっていうことは将来有望だよ」
「そう…ですか?」
メリーは鏡の前に自分の顔を見ながら、軽くファッション雑誌のモデルのようにポーズをとってみる
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