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一刀は現実に目を向ける。
助けを呼ぼうにも場所は分からず、一刀の事を父親と勘違いしている子供が大勢。
そのような中で一刀に出来ることなど高が知れていた。
「じゃあ、食料はどのくらいあるか分かるかな?」
「才に任せてください!」
一刀の問いに名乗りをあげたのは、茶色の髪に小さな眼鏡をかけた女の子だった。
才は立ち上がると、僅かにずれた眼鏡を直し、皆に分かるように説明を始める。
「食料としては、近くに川がありますし、竹林に囲まれていることから、餓死の心配はないと思います!」
「獲物なら取ってくるぞ!」
「お菓子作って〜な〜」
「おかし!」
「いい子ですね〜。静かにしてましょうね〜」
才の答えに付随するようにして、次々と子供たちが自分の考えを述べる。
子供たちの答えた内容に不安はあるものの、当面はなんとかなるかと質問を切り上げた。
それからは、本格的に子供たちとの生活が始まる。
子供たちにはグループのようなものが存在するようで、基本的にはそのグループで寝ているようだった。
一刀に、子供たちから要望されたのは一緒に生活し、食事を作ること。
それほど凝ったものは出来ないが、一般的なレパートリーのある一刀にとって難しくはなかった。
敢えて言うならば、大人数であるため調味料の加減が分からないことくらいだったが、それも数日で感覚を掴み、料理の腕はメキメキと上がり、美味しいと言えるものを作り始めたのだから、元々才能があったのかもしれない。
そうやって過ごす内に、月日は過ぎていく。
夏から秋に変わり、山の景色が変わり始めると、冬の暖を取るために、薪の備蓄の増加や、保存食。
それに動物の毛皮を使った毛布などを準備していった。
一体何処にそんな知識があるのか分からないが、動物の皮の鞣し方など知らない一刀にその子供は言ってのけたのである。
「そんなんはうちに任しといて! ええの作ったるよ!」
「さすが吉野ちゃんなの〜。私も服を作るの手伝うの〜」
「物作りは吉野が一番だな」
そうして部屋に閉じ籠ること数日で、みんなの分の服や毛布を作り上げたのだから、その技術力は子供だからと侮れるものではない。
家の補強も済ませて臨んだ冬は、思っていた以上に寒いものだった。
これまで、エアコンが無い生活を数ヵ月送ってきたものの、冬の夜間の寒さをまともに経験したことが無かった事から、自分の思慮の足りなさに一刀は後悔するが、それもすぐに消え去る。
寒さのためか、一緒の部屋で寝ている子供たちが一刀の布団に潜り込んでくるためだ。
子供の体温は意外と高く、一刀の寒さを和らげるには十分だった。
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