巻ノ二十五 小田原城その九
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「一国一城の主にはです」
「向いておらぬか」
「はい、ですから大名にはです」
「ならぬか」
「ご自身もそうした欲はおありではありませぬな」
「では真田家の次の主は信之殿じゃな」
氏政は風魔、姿を見せずに自身に話す彼の言葉を受けて言った。
「あの御仁か」
「そうなるかと」
「信之殿も器と聞く」
幸村の兄である彼もまた、というのだ。
「智は父君程ではないが温厚にして識見が広く落ち着いておってな」
「大名の資質があると」
「そう聞いておるが」
「その様ですな」
「そして幸村殿はか」
「真田家の武将、若しくは軍師となられるかと」
「軍師か、しかし武芸もじゃな」
幸村個人のその強さについてもだ、氏政は風魔に問うた。
「あの御仁は相当じゃな」
「ご自身も一騎当千の方です」
「やはりそうか」
「ですから余計にです」
「真田家とは争わずに」
「信濃からも手を引くべきか」
「あの家とは揉めてはなりませぬ」
風魔は氏政に強く言った。
「断じて」
「ではな、やはり甲斐及び信濃からは手を引いてな」
また言った氏政だった。
「関東に兵を進めていくぞ」
「では」
「関東を手中に収める」
「そうしましょうぞ」
「徳川家とも結び真田家ともな」
こう言ってだ、さらにだった。
「上杉家もじゃ」
「あの家とはどうされますか」
「揉めたくないがことを構えるなら」
その時はというと。
「引かぬぞ」
「そうされますか」
「関東は北条家のもの、関東管領になっているとしても」
「元は長尾家、やはり」
「越後におればよいのじゃ」
「そういうことですな」
「兵はこちらの方が上、それに我等にはこの城がある」
小田原城のこともだ、氏政は言及した。
「最後に勝っておるのは我等じゃ」
「この小田原城がある限りですな」
「どの家にも負けぬ」
「まさにですな」
「決して陥ちぬ城があるということを天下に見せてくれるわ」
こうまで言うのだった、氏政はこう言って風魔との話の後で重臣達を集めこれからのことを話した。だが幸村はそうしたことを知らず。
小田原を見て回った後はだ、家臣達に言った。
「ここから甲斐、信濃と行くか」
「いよいよですな」
「帰路につかれますな」
「そうされますか」
「そうしようぞ」
こう言ってだ、小田原を後にして上田に戻ろうとした。だがここで。
小田原を出たところでだ、一人の年老いた僧侶と擦れ違ったがだ、僧侶はふと幸村に顔を向けて言って来た。
「これから甲斐に行かれますか」
「おわかりですか」
「はい、こちらの道はです」
幸村達が足を踏み入れたその道はというのだ。
「甲斐への道なので」
「だからですか」
「途中武蔵にも寄りますが」
「はい、もう
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