暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ二十五 小田原城その七
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「義を貫いて生きたいです」
「そして死にたいと」
「そう考えています」
「そのお心はわかりました。ただ」
「ただ、とは」
「義といっても色々ですな」
 風魔は幸村に顔を向けて彼にその義の話をした。
「仁義、礼儀、信義、忠義、悌義。孝義と」
「ですな、儒学の教えにです」
「かなり当てはまります」
「それこそ智以外の全てに」
「貴殿はどの義を大事にされたいのでしょうか」
「全ての義です」
 すぐに、そしてはっきりとだ。幸村は風魔に答えた。
「どの義かでなく」
「全ての義ですか」
「はい、仁義にしても礼儀にしても」
「そして忠義にしても」
「人は意気に感ずともいいますが」
 唐の太宗の名臣の一人魏徴の言葉もだ、幸村は出した。
「拙者もです」
「意気、自身を認めた方に対して」
「忠義を尽くし」
 そして、というのだ。
「父、兄への孝にです」
「人としての悌」
「家臣、民への仁と信」
「誰に対しても礼ですか」
「全てを守りたいです」
「そうですか、その全ての義をですか」
「拙者は貫きたいです」
 絶対にというのだ。
「死ぬその時まで」
「大きいですな」
「そう言われますか」
「はい、義を貫くということも」
「拙者も思います、ですから」
「その大きなものをですか」
「拙者は望んでおります」
 こう風魔に言うのだった。
「そうです」
「そうですか、ではこれからも」
「進んでいきます」
 こう話してだ、そしてだった。
 幸村は風魔にだ、あらためてこう言った。
「それでなのですが」
「それでとは」
「はい、貴殿はどうして拙者に尋ねられたのでしょうか」
「その目を見まして」
「それがしのですか」
「はい、貴殿の目は澄んでいます」
 その通りだった、幸村の目は清らかに澄み切っている。その目の輝きは非常に強いものでもある。風魔の言う通りに。
「その目を見まして」
「聞かれたのですか」
「大望のある方をお見受けしましたので」
「左様でしたか」
「しかし。貴殿がそう思われるのなら」
 義を貫いて生きたいというのならとだ、風魔も言うのだった。
「そうされて下さい」
「はい、死すその時まで」
「さすればそれも適いましょう」
「必ずですな」
「まず思うことです」
「重いそして動けば」
「それが出来ます」
 こう言うのだった、幸村に。
「ですから」
「そうさせて頂きます」
 幸村も応える、そうしたことを話したのだった。
 風魔はここまで話してだ、席を立って幸村に言った。
「では」
「旅にですか」
「出ます、拙者も」
「それではまた縁があれば」
「お会いしましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 風魔は幸村と別れた、そうして。
 己の屋敷に
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ