四話 渇き
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その顔を見て、そのマヌケな顔を見て笑った。
子供のように。
無邪気に。
「左はないんだ。」
言葉と共に脚が出る。
上方からの蹴りにたまらず妖怪は地面にのめり込む。
「ガッ...」
「…おい」
狂夜は妖怪の額の毛を掴んで持ち上げる。
そして勢いよく地面に叩きつける。
「誰が寝ていいと言ったんだ?」
「ガ…」
繰り返し、
「応えろよ」
「ッ…ァ…」
繰り返す。
「…チッ」
狂夜は舌打ちして、妖怪を掴む手を離す。
妖怪は意識はあるものの全身に力が廻っておらず、立ち上がることも出来ない。
狂夜はしゃがみこみ、倒れている妖怪の犬歯を掴み、引っこ抜いた。
「GAa!?」
「黙れ」
狂夜は叫びそうになった口を思い切り閉じさせた。
歯が折れて飛び散る。
妖怪の神経が、感覚が、五感が、全て察知したのは危険信号。
『紅』だった。
元々濃かった目の紅は深みを帯び。
狂夜の頭髪さえも紅く染まっていた。
「乾苦、渇く、?ク、喰ウ」
「欲シイ、欲強い。欲しい。」
キョウヤは妖怪の懐に顔を埋め、内蔵を取り出す。肉を、血を、脳を、器官を喰べる。
妖怪の目に最後に写ったのは、狂気を孕み、笑う『少年』
『哀れ』と妖怪は想う。
『渇きを満たすことが生きがいなら、なんと、悲しい生物だろうか。
それならば満たすがいい。骨の髄まで。苦しみ、仲間を、全てを喪い、満たすのだ。』
全てを喰らうと骨に差し掛かった瞬間、キョウヤの動きが突然制止する。
「呼んでる…?」
呼ぶ声が聴こえる。
「狂夜さん!」
八雲紫、彼女の登場により、狂夜は意識を取り戻したようだ。
しかし紫は狂夜を恐怖し、狂夜もそれを感じとり、視線を外す。
沈黙の中、先に言葉を発したのは紫だった。
「狂夜さん、私は貴方を知らない。だから貴方に対し、怖がってしまいました」
狂夜はゆっくりと紫に視線を合わせ、驚愕とする。
「貴方を知りたい、その心を。」
その目は、真っ直ぐ狂夜を見ている。
そこに恐怖の色はない。
真っ直ぐと受け止めていた、彼の事を。
「ゆっくりでもいい、話してください。貴方を」
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