6部分:第六章
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第六章
「そうよ」
「有り難う・・・・・・」
「御礼なんていいわ。とにかくね」
「うん」
「もう。お菓子を毎日くれなくていいから」
彼にこのことも話した。
「もうね」
「いいの?それは」
「気持ちだけ頂戴」
康史の顔を見上げての言葉であった。
「それでね。御願いするわ」
「うん、じゃあ」
「それだけでいいから」
また言う優子だった。
「大石君の気持ちだけが欲しいから」
「蓮美さん・・・・・・」
「それじゃあ」
こうしてであった。二人はお互いに抱き締め合った。二人の心もそれで重なり合ったのだった。
そして暫く経って。優子は教室でクラスメイト達とにこにことして話していた。
「今日はね」
「今日は?」
「どうかしたの?」
「デートなのよ」
その顔での言葉だった。
「放課後ね。大石君とね」
「おやおや、もうそこまでなったの」
「デートなんて」
「そうなのよ。デートなのよ」
またこう言うのだった。
「いや、はじめてのデートなのよ」
「何時の間に付き合うようになったかと思ったら」
「もうそうなの?」
「付き合うようにもなったの」
「そうなのよ」
まさにそうだというのである。
「言わなかったかしら」
「最近お菓子を持って来なくなったと思ったら」
「そういう事情だったの」
「そうよ。そういう事情なのよ」
まさにそうだというのである。
「今最高に幸せよ」
「もう完全におのろけね」
「お菓子はなくなったけれど」
「見ているだけで甘ったるくて」
「どうなのよ」
皆それぞれ言うのだった。
「それって」
「奥手のあんたがね」
「勇気はいったわ」
それは事実だという。
「けれどね。今はね」
「幸せなのね」
「そういうことなのね」
「そうよ。幸せよ」
まさにその通りだというのだった。
「いや、本当にね」
「じゃあその幸せ者さん」
「楽しんできなさい」
「いいわね」
「楽しみはしないわ」
しかしそれは違うという優子だった。
「それはね」
「じゃあ何だっていうのよ」
「楽しまないとどうなの?」
「それじゃあ」
「幸せになってくるのよ」
まさしくそうなるというのだ。
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