5部分:第五章
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第五章
「それじゃあ。私達はトイレに行くから」
「またね」
「その間に考えればわかるから」
「そういうことでね」
こう言って席を立つ彼女達だった。優子は自分の席に一人だけになった。それで嫌でも落ち着き考えさせられた。そして出て来た答えは。
「・・・・・・そういうことしかないの」
俯いての言葉だった。
「それじゃあ」
俯いた顔を元に戻した。そうして。
その日の昼休みだ。彼女は早速動いた。校舎の屋上に出たのだ。周りがフェンスに囲まれたその見晴らしのいい場所で一人で立っていた。
そこにだ。彼が来た。おずおずとした動作で緊張した面持ちで。そのうえで来たのであった。
「ええと」
「来てくれたのね」
「あの」
その彼女に対して言ってきたのだった。
「何で僕をここに?」
「言いたいことがあるのよ」
康史の顔を見据えての言葉である。
「それでなのよ。実はね」
「実は」
「もういいから」
まずはこう告げるのだった。
「もうね。お菓子はいいから」
「えっ、いいって」
「お菓子はいいから。ただね」
「ただ?」
「大石君に聞きたいの」
自分より二十センチ以上も高い彼を見上げて問うた。
「今ここにいるのは私達だけだけれど」
「僕達だけ・・・・・・」
「そうよ。私達だけだから。どう思ってるの」
話の問いが具体的になってきていた。
「私のこと」
「蓮美さんのこと・・・・・・」
「聞きたいのよ。あのね」
優子はついつい俯いてしまった。顔が真っ赤になった。ここでも真っ赤になってしまったのだ。
「私はその・・・・・・」
「えっ、まさか・・・・・・」
「だって、ほら」
あまりにも恥ずかしくて言葉も出なくなってきていた。その中で必死に言うのだった。
「大石君のことわかるから」
「わかるんだ」
「もう。だからね」
そして言う言葉は。
「言葉で言って。それだけでいいから」
「それだけでなんだ」
「受けられるから」
今の言葉は優子の最大の勇気だった。
「それでね。受けられるから」
「そう。だったら」
「言って欲しいの」
その言葉を彼の口から聞きたかった。わかっていても聞きたかったのだ。
「今その言葉を」
「わかったよ」
康史も腹を括った。そうしてだった。
「じゃあ。言うよ」
「ええ」
「好きだよ」
康史もその白い顔を真っ赤にさせて言った。
「蓮美さんのことが。好きだよ」
「うん・・・・・・」
「だから付き合って」
そしてこうも言うのだった。
「一緒にいたいから」
「私も」
優子は自分の言葉と気持ちに正直に従った。
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