第十九話 夏ですその二
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「それが本当なのよ。バースに似てるから一緒に入れようって誰かが言って」
「バースに」
「似てる?」
「似てないわよね」
全然似ていないと思います。白人で髭が生えていれば誰でもバースに見えるっていう信者の方はおられますけれどひょっとして。
「似ていないけれど似てるって言ってそれで」
「入れたのね」
「で、その結果」
どうなったのでしょうか。
「浮かんでこなくて阪神はそれから物凄く長い暗黒時代だったわけなのよ」
「成程ねえ」
「そうだったの」
「つまりほこりを積んだってことなのね」
誰かがおみちに例えてこう言いました。
「それって」
「そうよね。どう見たって阪神ファンが悪いじゃない」
「ねえ」
やっぱりそんなことでした。阪神ファンときたら。
「それで最近までずっとああだったのよ」
「無茶苦茶凄いほこりじゃないの、それって」
「悪いんねんよね」
「ねえ」
いんねんにはいいものと悪いものがありまして。いいいんねんを白いんねん、悪いいんねんを悪いんねんと言います。ここでは完全に悪いんねんです。
「幾ら何でも無茶苦茶よ」
「そりゃそんなことしたら」
「やっぱり駄目よね」
「星野さんがその悪いんねんを払ってくれたのね」
星野さんの御名前もここで。
「凄い人よね、本当に」
「格好いいし」
「そうそう」
何故か昔から阪神ファンというものは巨人関係者以外には凄く寛容です。確か星野さんが率いておられた当時のドラゴンズにも随分負けたんですけれど。私がよく覚えているのはヤクルトにやたら負けていました。その時の野村監督の嫌味を子供心によく覚えています。
「熱血漢だしね」
「それがまたいいのよ」
とにかく星野さんは人気です。
「うちのお父さんは村山実さんが好きだけれどね」
「ああ、村山さんね」
もう随分前にでなおされましたが何故か私達はよく知っています。
「あの人も立派だったらしいわね」
「ザトペック投法ね」
皆知ってるのはお父さん達から聞いているからだと思います。親から子へいいことを伝えていくのがおみちの基本の一つです。それにしても古いお話ですが。
「その速球とフォークで」
「終生のライバル長嶋茂雄に敢然と立ち向かう」
思えば凄く絵になります。
「格好よかったらしいわね」
「まさに阪神だって」
私にとってもあの十一番は心強い番号です。私の好きな数字は十と十一と二十二、二十八、三十一、それと四十四です。どれも凄く頼もしく感じます。
「巨人が何だっていうのよ」
「ねえ」
とかくこの学校には巨人ファンが少ないです。
「これからは阪神よ」
「猛虎の咆哮が日本中に響き渡るのよ」
ある人が関東でこれを言ったら俺にはゴキブリがのたうち回っているようにしか見えない、と言わ
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