9部分:第九章
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第九章
「これでわかったよね」
「わかったわ。そうだったのね」
「コートは脱げるかな」
「ええ、それじゃあ」
それも脱いでみる。するとであった。
寒くなかった。しかも全くだ。
驚きを隠せないままで。彼女はまた言うのだった。
「どうかな」
「やっぱり寒くないわ」
「ええ、全然」
そうだというのであった。
「コートを脱いでも」
「だから暑い位なんだよ」
彼はまたこう話した。
「今はね」
「そうだったの」
「確かにさ、安座間は沖縄出身だし」
それはもう何があっても変わらない事実であり前提であった。だから篤もこのことを強調して述べたのである。
「ここの寒さにも弱いよ」
「ええ」
「けれどだよ」
それでもだというのである。
「実際脱いでみるとそうでもないだろ」
「意外とね」
「思い込んでるだけだったんだよ、そこまで寒いってね」
「そうだったのね。私が思っている以上に暖かかったのね」
「そりゃシベリアじゃないんだからさ」
笑ってこんなことも言う彼だった。
「ここはさ」
「わかったわ。じゃあ手袋もね」
「ああ、それもね」
それも脱ぐのであった。するとやはり寒くはなかった。彼女はそれで余計に笑顔になった。
そうしてさらに飲み食いしてであった。カラオケをして楽しく暖かい時間を過ごした。ただ店を出るその時である。二人は少し工作に明け暮れていた。その工作はというと。
「制服はな」
「学校のマークもね」
「見えないようにしないと」
「そうそう、お酒飲んでるし」
二人共もう顔は真っ赤であった。それだけ飲んだということである。
「ばれたら停学だしな」
「気をつけないと」
「よし、これでいいよな」
「私もいいわよね」
お互いにチェックもし合う。見ればお互い何の問題もなかった。
「よし、それじゃあ」
「お店出ましょう」
「顔はどうしようか」
ここで篤はふとこんなことも言った。
「安座間顔真っ赤だし」
「そっちもよ」
「ええと、これは仕方ないかな」
「そうね。何も知らないふりして出ましょう」
こんなやり取りをしてカラオケボックスを後にした。それからは二人でデートであった。そしてその次の日からの真紀はというと。
コートは着ていた。一応ミトンもしている。マフラーもだ。だが帽子と耳当てはなく下もストキングを二枚重ねだけである。それだけであった。
「えっ、急にまた計装備になったわね」
「どうしてなの、また」
「何かあったの?」
「うふふふ、しかもよ」
クラスの面々が驚く中でコートを脱いでみせる。すると制服の下にセーターを着ているだけである。そして小声で彼女達にこんなことを囁いた。
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