Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 10. Don't judge by appearance (2)
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耳朶をギリギリと捻じり上げた。
手加減なく思いっきり抓っているせいで、ミチミチという肉が軋む音が聞こえてきそうな気がするくらいに外套女の耳がツイストして変形している。某劇画調漫画家のイラストもかくやという程の苦悶の表情が浮かんでいる辺り、相当効いていると見える。昔、親父が殴りかかってきたのを叩き落としたついでにやったときも、後で親父が割と真剣な顔で「あれはヤバイからせめて他のお仕置きにしてくれ」といったくらいだ。
以前リーナから教えてもらったが、NPCには人間の五感に対するリアクションのシミュレーションプログラムってのが入ってるらしい。その中にはもちろん痛覚も存在して、仮にNPCがモンスターかなんかに襲われて負傷した場合、苦悶の声を上げたり顔を歪めたり、なんて反応を返すそうだ。もしその痛覚ってのがきっちり現実のそれを反映できてるなら、いかにAIが動かすアバターでもこの激痛には耐えられないだろう。
「みみがあああぁぁっ! みみがとれちゃう、とれちゃうってえええぇぇぇええええっ!!」
「用件話せっつってんのにシカトして屁理屈ばっかほざきやがって……人の話を聞かねえ、生ゴミみてえな耳なんて要らねえよな? 壊れた物とか要らない物はとっとかないで捨てなさいって、ウチの妹も言ってたぜ。アレだよ、世の中大切なのは断捨離だよ!! 断! 捨! 離!! 断ッ! 捨ァ! 離ィッ!!」
「あにゃああああああああみみがみみがみみみみミミみみみミミミみミみみみイいいぃぃィッ!!!」
何やら叫び声が壊れたミンミンゼミみたいになってきたし、もう充分だろう。というか、これ以上やると、マジで耳朶がポロッと逝きかねない。さっきの茶化しに対しての怒りもなんとか静まったし、一先ず放すか。
手を放してやると、外套女はものすごい勢いで俺から距離を取った。耳朶が真っ赤になってるのは、俺の地獄ツイストにリアルなダメージ判定があったからか、それともまた半泣きになってるからか。いや、HPが減ってねえから後者だな。つうか俺、NPCに触れるどころか害を与えたのに、警告もなんもねえな。マジでどうなってんだか。
気になることは山ほどできたが、とりあえず後回しだ。怒りがある程度収まってても警戒は欠片も解かない。効き目が継続してるうちにきっちり脅しとくか。じりじりと後ずさりする女に俺はゆっくりと歩いて近づいていく。
「さあ、次は良く考えて喋れよ? もし、まだ茶化しやがるようなら……」
「よ、ようなら……?」
恐る恐る、という様子の女に対して、俺はあらんかぎりの怒りを込めた笑みを浮かべて、
「……耳だけじゃなくて、屁理屈しか喋らねえ喋る舌も、要らねえよなあ?」
「ひ、ひぃっ!?」
顔色が一瞬で真っ青になる外套女。効果テキメンで何よりだ。
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