Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 10. Don't judge by appearance (2)
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く見てみると、奴を示すカーソルの色はオレンジではなく確かに黄色に染まっていた。
その色の意味するところは、
「コイツNPCなのかよ!?」
「ひっ……!」
俺の驚く声と、誰かの怯えたような細い悲鳴が重なった。石造りの通路に声が反響しながら消えていき、その場に沈黙が降りた。
「……おいキリト、今の女々しい悲鳴はテメーか」
「そんなわけないだろ! 男の俺にあんな声が出せるか!」
「前々から女っ面だとは思ってたが、内面までソッチ寄りなのかよ……超ドン引きだぜ」
「他人の話を聞けよ!!」
やっぱり線の細さは気にしていたのか、ムキになって反論するキリトを放置して、俺は蹲ったままのNPCへと近づいて行った。戦意は一かけらも無さそうだが、また顔面に蹴りが飛んでこないとも限らない。刀を右手に持ったまま、ゆっくりと奴との距離を縮めていく。
近づいてみると、黒い布の塊にしか見えなかったソイツの輪郭がはっきりと見えてきた。第一に、纏ってるのはマントじゃなく、昔歴史の教科書かなんかで見た古ぼけた外套だった。そこに浮かび上がっている身体の線は思いのほか華奢で、さっきの鋭い一撃のイメージとは到底結びつかない程だ。獲物はまだえないが、腰には淡黄色に塗られた細身の鞘が提げられている。緩く湾曲した形状からして、多分刀の鞘だろう。
何となく正体に目星がついた俺は、距離一メートルのところで足を止めた。俺のブーツの音が止まったことに気付いたからか、NPCの身体がピクッと跳ねた。
どう見てもコッチに対してビビりまくってる。先に攻撃してきたのはソッチだろうが。一人で不意打ちかまして一人でガクブルするとか、どういう脳みその作りしてんだよ……ああ、コイツ人間じゃねえから脳みそねえのか。
脳内に渦巻く益体もない考えを捨て去り、俺は静かに問いかける。
「……アンタ、何モンだ? なんでいきなり、俺を狙ったんだ」
俺の問いに対し、NPCはまたピクッと身体を跳ねさせる。強く掴めばへし折れそうな肩が微かに震えている。虐めているようで非常にやりにくいったらないが、だからってこっちまで黙ったままでは事態は解決しない。心を鬼にして、俺はさらに質問を続ける。
「この前、ここらで煙みてえに消えた外套の女を見たって情報があった。アンタがそうなのか? 何が目的で、ここをウロウロしてんだよ」
「……っく…………な、さぃ……」
微かにだが、返答らしきものがあった。だが、声がかすれちまってて良く聞こえない。
もっと近くで聞こうと一歩踏み出したその時、そいつがようやく顔を上げた。
そこにあったのは、ギリシャの彫像を思わせる、見覚えのある彫の深い端正な顔立ち。リーナに勝るとも劣らない、石膏のように白い肌。被ったフードの縁から覗くのは緩
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