Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 7. Die Hard’s Daily Life (2)
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「そら見ろ、人の食い物盗ったバチが当たったんだよ。反省しろ」
「ふぉ、ふぉめん! ふぉめんなはいヘリっひ! ふんまへんへひは!!」
「何言ってんのかわかんねーよ。ったく……ホレ、水」
差し出した水瓶を高速で奪い取り、一気に半分以上を飲み干すアルゴ。朝からサンバみたいなリズムで右往左往していた自称腕利きは、涙を目に浮かべながら赤くなった舌をベーッと出して火傷を外気で冷やそうとする。中々間抜けなその面を見て、ちょっと溜飲が下がる俺だった。
「ウー、美味しい物にこんな罠を仕掛けるなんテ、ベリっち、意外と鬼ダナ」
「仕掛けてねえし、他人の食い物パクッといた上に鬼呼ばわりはねえだろ。自業自得だ」
「ふーっふーって冷ましてカラ、はい、あーんってしてくれる甲斐性を、オネーサンは期待してたんだけどナー」
「……おい、そのシーンちょっと想像してみろ」
「ん? んー……ウワッ、ベリっち気持ち悪ッ」
「ホラな」
「あっ!? ウソウソ今のナシ!」
しまった、とばかりに慌てて訂正するアルゴにため息を吐いて、俺はベンチから立ち上がる。こんな茶番をやってる間に、もうけっこうな時間が経っちまった。そろそろ宿に戻らねえと。
「んじゃあ、俺はもう行くぜ。またな」
「ベリっち、マジでウソだかんナ? 本気にすんなヨナ!?」
「へいへい」
けっこう必死なアルゴの念押しにおざなりな返答を返しつつ背を向けて、俺は宿屋のある九番街へと歩き出す。夕飯はリーナのワガママを聞くが、朝飯は俺が決めるのが俺等の間のルールだ。今日は三番街の一番人気のベーコンエッグトーストが美味い店がいいな。既に少しずつ人出が増えてきているし、三番街は遅いと混むから、早めに行って席を確保したい。
「オーイ、ベリっちー! メシ盗ってゴメンナー! 今度、埋め合わせにメシ行こうナー!!」
背後から響く良く通る声に手を上げて応え、俺はすっかり陽の昇った中央広場から立ち去った。
◆
「おはよう一護。早速だけど、アルゴにご飯あげたでしょ」
「……お前、マジでエスパーだろ」
その一分後。
起き抜け一番、寝起きの半眼でそう言ってきたリーナに、俺は割と本気の恐怖を抱くことになったが。
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