Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 7. Die Hard’s Daily Life (2)
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報提供者も多いらしいアルゴなら、そういったアブナいポイントの情報も多く集まる。俺は望む情報を得ることができ、アルゴは情報料だけでなく、俺たちがそのへ向かった、すなわち、そこの地点の危険なトラップが一つ排除される可能性が高い、という情報も得ることができる。また、元々情報の少ない最前線のネタが俺等から仕入れられるってことで、アルゴにとっては旨みが強く、俺たちはお得意様としてけっこう重宝されてるようだ。
「いつも情報さんきゅな、アルゴ。今回はいくらだ」
「三千コルってトコだナ」
「……ヤケに安いな。割り引いたとしても、危ねえネタは高えんじゃねんのかよ」
「アブなすぎて、今回はオレっちが裏取りに行けてねーんダ。なんせ、最前線の奥の奥ダ、大部隊ナラともかく、ソロで行くにはキツ過ぎるからナ」
そう言って、アルゴは大袈裟に肩を竦めて見せた。トレードマークの頬のヒゲペイントといい、フードに隠れた金の巻き毛といい、そしてその身軽な動作といい、渾名である「鼠」を彷彿とさせる、俺の周りにはいなかったタイプの人種だ。現実で会ったら、意外と親しくやれそうな気安い奴、対価であるコルを手渡しながら、俺はそんな風に感じていた。
「あいヨ、毎度アリ。ところでベリっち、手に持ってるソレ、なんダ?」
「クロケットだ」
手の中の銀貨入りの小袋を玩びながら訊いてきたアルゴに対し、俺は朝飯までの空腹凌ぎ(先に朝食を摂っちまうとリーナがキレる)に食っていた揚げ物を見せてやる。
クロケットはつい昨日できたNPCの屋台で売ってる俵型のクリームコロッケみたいな食い物で、中にはひき肉とみじん切りにした野菜、ホワイトソースが入ってる。具材や味付けはシチューに似てて、その熱さと濃厚さが寒い冬の朝によく合っている。
「へー、ウマそうだナ。なあなあベリっち、オレっちに一口くれねーカ? 朝メシまだなんダ」
「その手にある金使って、自分で買って食え。他人に食い物を分けたり奢ったりすると、リーナの勘で見抜かれちまう。むくれるとメンドクセーんだよ、アイツ。飲食物をくれてやりゃあ直るけどさ」
「……リっちゃんって、独占欲強いんダナ」
「食い物に関しては、人一倍な」
「ソーユー意味で言ったんじゃネーけど……スキありッ!」
「あっ、テメッ!」
一瞬気を抜いた瞬間、アルゴは素早く俺の手を飛びついてきた。そのまま抱きかかえるようにして動きを封じ、クロケットをガッツリ齧り取った。いろいろびっくりな行動だが、それをたしなめるより早く、俺はアルゴを振りほどいてアイテム欄を開き、水の入った瓶をスタンバイする。
なにせ、
「んぐんぐ……アッ!? あふっ、あふぃっ!!」
この灼熱の揚げ物に冷ますことなく噛みつけば、確実にこーなるからだ。
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