暁 〜小説投稿サイト〜
Deathberry and Deathgame
Chapter 2. 『想う力は鉄より強い』
Episode 7. Die Hard’s Daily Life (2)
[5/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
限界っぽいしな。

 椅子の上でこっくりこっくり舟をこぐリーナを見て、俺は肩を竦めた。

「コイツ、八時前には必ず眠くなるんだ。そんで朝は七時キッカリに起床。よく食うしよく寝るし、成長期のガキを見てるみてえだ」
「ははっ、随分と規則正しい生活リズムなんだな、お前んとこのお姫様は」
「うるせーな、コイツはお姫様ってガラじゃねえよ。せいぜいお転婆がいいトコだ。キリトこそ、一層の時に居たあの女剣士とはどうなんだ? もう組んでねえのかよ」
「俺もアイツもソロだ。他人と行動するのは性に合わないんだ」
「へーそうかい、ソロってのも難儀だな……っと、早くしねえとマジで寝ちまう。おいリーナ、行くぞ」
「…………んー?」

 眠気で意識が朦朧としているのか、半眼のリーナから気の抜けた返事が返ってきた。

「んー? じゃねえよ。鑑定終わったから帰るぜって言ってんだ」
「………………」
「聞いてんのか? 置いてくぞ?」
「…………って」
「あ?」
「……背負ってって」

 もう八割閉じかけた目をこっちに向けて、両手を伸ばすリーナ。小さな椅子の上で身体が左右にフラフラ揺れていて、非常に危なっかしい。

 普通なら呆れ果てるか「ふざけんな自力で歩け」と言ってやるところなんだが、生憎とこれが初回じゃなかったりする。ひと月前、狩りが長引いて帰るのが深夜になった時にやられてから、夜に出歩いているとかなりの確率でこうしておんぶを強請(ねだ)ってくる。普段の沈着冷静で油断を許さない振る舞いとの余りの落差に呆れることすら出来ず、

「……仕方のねえやつだな、ホント。ほら」

 以来、こうやって背負ってやってる。

 片膝を床についてしゃがんだ俺の背に、リーナは倒れ込むようにして被さってきた。両足の下側に手を差し入れ、首にぎゅっと回された手が解けないことを確認してから、落っこちないようにゆっくりと立ち上がる。耳元ですーすーと音を立てる寝息が、少しくすぐったい。昔、遊び疲れた遊子や夏梨を背負って帰った夕暮れを思い出すこそばゆさ。ひょっとしたら、この懐かしい感覚が、こいつがおんぶオバケになっても突っぱねない一番の理由なのかも知れない。

「さて、今度こそ帰るか……ってナニ見てんだよ、オメーら」
「いやー、だって、なあ?」
「なあ?」

 俺を見てにやにやと気持ち悪い笑みを浮かべる男二人。なんとなく思っていることは分かるが、余計なことを言うとまた要らない誤解を生みそうだ。二人を睨みつけるように一瞥してから、俺は冬の寒空が広がる夜の主住区へと足を踏み出した。
 途端、暖房の効いた店内とは真逆の、刺すような冷気が俺に纏わりつく。

「うーさみぃ、俺もそろそろマントでも買うかな……」

 ぶ厚いケープに包まっているせいか、気温が急
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ