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冬虫夏花
1部分:第一章
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第一章

                     冬虫夏花 
 冬は目立たない。そんな女の子である。
「あれ、あんたいたの」
「何時の間に来てたの?」
 遊ぶ約束をしていた女友達に待ち合わせの場所でこう言われる始末である。
「気付いたらいたけれど」
「何処にいたのよ」
「今来たところだけれど」
 その地味な服装で言う彼女だった。見れば黒いコートにロングスカート、それにグレーのマフラーとくすんだ白のミトンである。そんな重装備である。
「けれど。寒いわね」
「寒いのはわかるけれど今のあんたって」
「何ていうか地味?」
「地味っていうかめちゃくちゃよね」
 その彼女の姿を見て皆言う。呆れてさえいる。駅の改札口の前のその白く詰めたいコンクリートの中で皆彼女に対して話すのである。
「女の子同士で遊びに行くけれど」
「もっとお洒落したらどうなの?」
「そうよ。折角なんだから」
「だから寒いから」
 顔の下半分はマフラーで隠れている。それで目だけが見える。髪の毛は上でまとめていて帽子の中に入れている。その帽子もロシア人が被る様な帽子である。
「それでなんだけれど」
「だから寒いのはわかるわよ」
「それはね」
 皆それはわかるという。見れば彼女達もコートやマフラーやジャケットを羽織ってはいる。その舌にはセーターも着ている。しかしその娘程重装備ではない。
「けれどあんたそれって」
「ロシア人?」
「モスクワにでも行くの?」
「モスクワみたいに寒くない?」
 彼女は困った目で言う。顔から見えるのは目だけである。その肌はよく日焼けしているのが覗く。しかし顔の上半分の僅かな部分だけが顔から見える。
「今日って」
「今日はまだそんなに寒くないわよね」
「ねえ」
「全然大丈夫じゃない」
 皆はこう言い合う。
「それなのに耳に覆いまでして」
「幾ら何でもやり過ぎでしょ」
「そんなにここって寒いの?」
「寒いわよ」
 彼女は言うのである。姿勢も縮んでおり如何にも寒そうである。その中で小さな声を出すのだ。
「とても」
「まあ寒いのは仕方ないけれど」
「それでもそれはないんじゃないかしら」
「全く。何で冬になったらそんなに重装備なのよ」
「学校でもそうじゃない」
 皆は呆れながら口々に言っていく。どうしてもなのだった。
「分厚いコートにマフラーに」
「しかもよ」
 まだあるのだった。
「スカートの下は毛糸のパンツに厚いストッキングとタイツまで履いて」
「色気も全然ないじゃない」
「寒いから」
 また言う彼女だった。
「寒いから仕方ないじゃない」
「やれやれ。こんなのじゃ彼氏なんてとても」
「できないわね」
「全く」
 そんな話をしながら遊びに向かう。冬の街は彼女にはとても辛いも
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