巻ノ二十五 小田原城その一
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巻ノ二十五 小田原城
幸村主従は鎌倉から小田原に来た、その巨大な城を見てだった。
まずは十人の家臣達がだ、思わず唸った。
「これはまた」
「話には聞いていたが」
「街が全て城の中にあるぞ」
「この様な城はな」
「流石にない」
「他にはな」
「これが小田原城じゃな」
幸村もその城を見つつ唸る。
「そもそも造り方が違うな」
「他の城とは」
「そこからが違いますな」
「街を堀と壁で囲んでおる」
幸村は小田原城のことを言った。
「だからこそな」
「ここまで大きいのですな」
「他の城とは違い街が中にある」
「だからですな」
「そうじゃ、どうも大坂城もそうした造りにする様じゃが」
しかしというのだ。
「この城程大きくはなかろう」
「左様ですな」
「これでは下手な数の軍勢では攻められませぬ」
「それは到底」
「うむ、とてもな」
それこそ、というのだ。
「二万や三万ではな」
「信玄公、謙信公でもですか」
「攻め落とせぬのも道理」
「そうなりますな」
「この城を攻め落とすのなら」
幸村はまた言った。
「十万は必要か、それに」
「十万もの兵に加えてですか」
「さらにですか」
「あの山じゃな」
小田原のすぐ傍にある山を見た、そのうえでの言葉だった。
「あそこに城を置くべきじゃ」
「あの山にですか」
「というと付け城を置いてですか」
「じっくりと攻めるべきですか」
「そうじゃ、そして城ではなくな」
さらにだった、幸村は家臣達に話した。
「人を攻めるべきじゃ」
「殿がいつも言われている様に」
「城ではなく、ですな」
「人を攻める」
「そうあるべきですな」
「城を攻めるのはそもそも下策じゃ」
孫子の言葉だ、幸村はそこから考えているのだ。
「人を攻めるのが上策じゃからな」
「城そのものを攻めるのではなく」
「城を守るその城をですな」
「攻めて、ですな」
「そのうえで攻め落とすものですな」
「そうじゃ、そうしてじゃ」
まさにというのだ。
「攻め落とすべきじゃ」
「ううむ、そうして攻めればですか」
「この城も攻め落とせますか」
「このとてつもなく大きな城も」
「殿がいつも仰る様に」
「どの様な城も人を攻めれば陥とせる」
そうなるとだ、また言った幸村だった。
「そうしたものじゃ、この世に絶対というものはないからな」
「この城でさえ」
「攻め落とせる」
「多くの兵と付け城、そして人を攻めれば」
「そうすればですな」
「それが出来る、まあ話はこれ位にしてじゃ」
そうしてというのだ。
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