第3章 黄昏のノクターン 2022/12
27話 再起の証
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せては縁の手前まで勢いよくワインを注ぎ入れる。有無を言わせぬ威圧感があるような、そんな気がした。
「うわー………リゼちゃんに絡まれちゃった………」
「………見た感じ、性質が悪そうなんだが、大丈夫か?」
「見てれば分かるよー」
声を潜ませるレイの音量に合わせて問うと、静かに首肯される。間もなく両手を合わせ出す始末だ。
「イヤ、ほんとに急ぎだかラ………」
「ほう………アタイの注いだ酒が飲めないってのかい?」
「………じゃあ、一杯だけ………」
圧力に屈し、おずおずとワインを喉に流すアルゴの姿を見守るリゼルは無言で頷き、口角を吊り上げる。
「美味しかったかい? ………それじゃあ、お姉さんに話してくれるよね? ………今、何を探ってたか」
「やっぱりダ! こないだも食らったリゼ姐の手口じゃないカ! もうやらないって言ってたの二!? 信じてたのニ!?」
「済まないね、鼠を捕るには罠が要るんだよ………おっと、同じAGI極でもアタイからは逃げられないって、もう判ってるだろ?」
「そりゃあ腕を掴まれてちゃ逃げられないヨ!? あーもう、これだから最近赤字がかさむんダ………って、ちょっとオイラのお尻撫で回すのやめようカ!?」
何か大切なものを護ろうと喚くアルゴと、愉悦に歪んだ表情をつくるリゼル。
見てはいけない女マフィアの手練手管――――もとい、交渉術に度肝を抜かれながらも、なんとあの鼠をいとも容易く、いっそ鮮やかなくらいに手玉にとってしまうリゼルには驚嘆される。
そして、観念したアルゴの口からは流れ出るように現状の目的が明かされる。聞き様によっては含みのあるような内容だが、何を期待していたかリゼルは完全に興味を無くしていた。それもそうだろう。《鼠》のアルゴを雇ってまで調べようとしていた情報が、たかだか主街区に存在する《クエストNPCの所在》というのだから、肩透かしも食らいそうなものだ。
「………しかし、全くベータテストの頃と同じだ。本当に水を張っただけじゃないか?」
「そーだろーナー。ま、だいたいは調べつくしたシ、このまま届けに行ってもいいんだケド、クライアントの居場所を探すのがナー」
そして、既に吹っ切れてしまったアルゴはとうとう逃げ出そうともしなくなり、近くの椅子を引っ張ってきて皿の料理に手を付けながら、マップデータの確認を俺に任せてきた。こんな情報は別に確認するまでもないのだろうが、頼まれたのであれば断るつもりもない。言うなれば、俺達は誰かに提供される商品を先に開封してしまったような状況にある。検品という建前にしてもらえれば許されるだろう。
………だが、主街区の北西部にあるべきロモロのマーキングは、やはり抜け落ちている。
特定のフラ
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