第3章 黄昏のノクターン 2022/12
27話 再起の証
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ボク的に高得点だよー!」
ベータテストの頃は味でワースト首位を射止めんとする程の、いわくつきの店ではあるのだが、あくまで涸れ谷という環境の特性による整合性の調整によるものだから当時の評価はアテにならない。少なくとも、料理から漂う匂いはかなり期待できると思われる。
………と、視界の端で、素早く動く影に気を取られる。
水路側でゴンドラの舳先を足場に対岸からこちらに渡った小柄なローブ姿の人影は、NPCを目視するとマップデータを示したウインドウにタップして何かしらの処理を施しては足早にどこかを目指して踵を返す。
第三層に置いて俺を死地に追いやったPKかと警戒して、反射的に席から立ち上がるものの、フードから覗く三本髭のメイクが人違いであることを継げていた。慌ただしく駆け抜けようとする三本髭は忙しそうだが、声を掛けても罰は当たるまい。
「アルゴ、何をやってるんだ?」
「………ンン? なんだリンちゃんか。オンナのコをこんなに囲って、隅に置けないナー」
さっそく、息でもするかのようにからかってくるアルゴだが、今となってはどうにも動じなくなってきた。というより、この遣り取りが嫌いではなくなっていると表現すれば良いのだろうか。慣れとは恐ろしいものである。
「生憎、そこまで女受けは良くなくてな。ちょっとクエストを終わらせたんでご相伴に預かっただけだ。で、随分と忙しそうだな」
「まーナ。クライアントのご用命でちょっと調べものサ」
「四層に到達していきなりか。売れっ子情報屋も大変だな」
「これぞ信頼と実績と親しみの為せることダナ!」
実績はともかく、信頼と親しみは如何なものだろうか。素直に認めることは難しいが、情報屋としての品揃えや仕入れのお手前は間違いなく一級品だろう。だからこそこの《鼠》が何を探っていたのかは多分に気になるところではあるが、そこに踏み込んでしまうのは無粋というものだろう。俺にだって触れてほしくない情報があるように、アルゴにも商品を取り扱う責任というものがあるだろうから。
………などと考えていると、奥の席に座っていたリゼルが空のグラスを二杯と白ワイン風の飲料アイテムを一瓶携えてアルゴの前に歩み出てくる。一瞬強張ったようなアルゴは、突然ソワソワと水路側に振り向くような仕草を見せ始める。違和感を覚えるものの、そこまでアルゴについて知っているわけではなく、これがどのような意思表現であるのかは判断しかねる。
「そ、そういえば、もうすぐクライアントに合わないとだかラ、じゃあオイラはこれデ………」
「まあ待ちなよ。せっかく来たんだ………ここは一杯くらい奢らせてくれてもいいじゃないか?」
この場を離れようとするアルゴを引き留めて、リゼルは半ば無理矢理にグラスを握ら
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