第3章 黄昏のノクターン 2022/12
27話 再起の証
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け育つ、バーチやオークのような丈夫な材がな」
そして少し間を置き、もったいぶるように続ける。
「じゃが、最高の船材はなんと言ってもチークじゃ。年経たチークの大木から芯のいいところを切り出してくれば、頑丈な船を造れるじゃろうて。もっとも、木こりをしたこともない素人にゃ歯がたたんわな………」
「木材ってたくさん種類があるんだねー。それにおじいちゃん、物知りなんだね!」
「フン、伊達にガキの頃から船大工をしとらんわ」
クエストログの進行も気に留めず、ヒヨリは話を続ける。意外にも不承不承といった態度で対応されていないようにも見て取れる。完全に孫と老人の構図が完成しつつある。
「じゃあ、この丸太を見てもらいたいんだけど、これって何の木なの?」
「どれ、見せて………み、ろ………」
まんざらでもないような口振りであったロモロは、ヒヨリが床に突きたてた《銘木の心材》の赤みがかった肌を見て、いよいよ言葉を詰まらせる。数秒、ラグでも発生したのかと思ってしまうような無言を隔てて、ロモロは口を開く。
「………うむ、見事なチークの心材じゃ」
「これが一番良い木なの?」
「おうとも。脂に木、これほどまでに質の良い材料が顔を合わせるなど、そう滅多にあることではないぞ………だからこそ、ワシも報いねばのう」
ロッキングチェアから腰を上げ、酒瓶は机に置かれる。
かつて数多の船を世に生み出したであろう翁の背は南側の壁。水路側に突き出た部分へ繋がる扉の前に立ち、頑丈な錠前を外して重そうな扉を開け放った。
「………長いこと待たせたな、仕事の時間だ」
扉の向こう側の空間に感慨深げに呟くロモロを余所に、その奥に何があるのかを探るべく目を凝らす。光の馴染まない薄暗な室内には、その僅かな光量でさえも玉石の如き輝きを返す数多の工具が所狭しと壁に掛けられていた。光沢はまさに手入れの行き届いている証。どれほどの期間かは判断できないが、これまで眠っていたとは思えない冴えを感じさせる。
やがてロモロは工具置き場の隅から巻いた羊皮紙を引っ張り出し、未だ素材の多く残っているテーブルに広げる。邪魔だったのか、はたまたシステムの仕様か、幾つか納品されたアイテムを除く他は全て持ち主のストレージへ押し返された。
「では、造りたい船の仕様を決めてくれ」
更にクエストログが進行し、ヒヨリとクーネの前に紫のウインドウが一枠ずつ開かれる。テキスト入力欄やプルダウン・メニューが並んだ、船の設計仕様書ともいうべきものらしい。
「す、すごいよ燐ちゃん! 色がものすごいいっぱい選べるよ!?」
「RGBサークルだからな」
「どうしましょう!? デザインがたくさんです!?この中から選べるんですか!
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