第8話 ゼクト vs ミラジェーン
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それと同時に、ミラは膝を付くだけでなく、完全に地面に倒れ込んだのだった。
倒れていたミラの頭に過ぎっていたのは、《敗北》の二文字だった。
それも 明らかに相手は全然全力じゃないって感じる。
なぜなら相手は、攻撃の【こ】の字も使ってないのだ。全部攻撃は自分だけであり、相手は攻撃らしい攻撃なんかない。その上、自分に触れたのは、攻撃でではない。………最後に頭を撫でる様に叩いたあれだけだ。
こんな、完膚なきまでの敗北は、生まれて初めてだった。
ギルドでの喧嘩でもそう、勿論、エルザとの喧嘩ででも。初めてだった。
「う……うぅぅ………」
そして、涙を流すのも初めてのことだ。
拭っても拭っても、止め処なく、目から流れてくる涙。
「ふぅ……」
ゼクトは、身体から力を抜いた。集中させた魔力を鎮めていった。どうやら、それに集中していたせいか、ミラが泣いている事に今 初めて気がついた様だ。
「あっ……その、だ、大丈夫…? ひょっとして……痛かった?」
ゼクトは、慌ててミラに駆け寄って申し訳なさそうに言っていた。
その姿を見て、言葉を訊いて、ミラは悔しさからか、本当に腹が立った。
「悔しい…悔しいんだよっ! 何よっ……アンタ……攻撃はいっさいしなくてッ。私を嘲笑うようにしてっ……! そ、そんなに、わたし、わたしを、見下したいの……っ」
ミラは、そう言って泣き続けた。
これが、八つ当たりだってこと。敗者が何を叫んでも、負け惜しみにしか聞こえないって言うのは、判る。判っている
ナツだって、何度も私に負けて、色々と騒いでいた。
その時、自分自身にはそう聞こえていたのだ。いざ、自分の立場になったら、同じように泣き喚く。その自分自身にも腹立たしさをミラは覚えていた。
「……………」
それを訊いて、ゼクトは、黙った。何も、言えなかった。
だけど、ミラは止まらなかった。
「なによっ………! な、なんか言ったらどうなのッ!」
ミラ自身は、言いたくないのに、言ってしまった。全然止まらないのだ。
涙も、そして口から出る言葉も。
負けたのは自分なのに、こんなに傲慢で怒鳴り散らすように言ったら、それも勝者にそんな事を言ってしまったら。相手がどう思うかなんかよく判る。自分自身に当てはめたら本当によく判る。
「……ッ!」
だから、これから、ゼクトに何を言われても、覚悟していた。その言葉に耐えられるかどうか判らないけど、覚悟はしていた。
「……今、オレが何言っても、信じてもらえないかもしれないけど………」
だけど、帰ってきた言葉は、全く違う種類のものだった。
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