暁 〜小説投稿サイト〜
Deathberry and Deathgame
Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 5. The dianthus and the strawberry
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な地獄に行くってことだぜ? 負けたらもう、生きて現実(アッチ)には戻れねえぞ」
「勝てばいいだけの話でしょ」

 すっぱり言い切ったリーナを見て、俺はコイツのイメージを改めることになった。

 コイツは第四十刃(ウルキオラ)なんかじゃない。アイツみてえな冷めた表情をしてても、その翡翠の瞳の奥には想像以上の激情が宿ってる。大の男でも気圧されちまうような迫力が、今のリーナにはあった。
 けど、俺がそれを見て感じたのは、感心でも驚愕でも、ましてや恐怖でもない。

 ただ、懐かしかった。

 似てるんだ、どうしようもなく。
 死神の力を手にしたばかりの、俺に。一人の恩人を救うために仲間と一緒に敵の本拠地に乗り込んだ、十五の俺に。

 自分の世界を変えてくれた人を助けるために強くなった俺。
 自分の世界を変えちまった人を倒すために強くなろうとするリーナ。

 境遇は少しばかり違うかもしれない。持ってる感情(モン)も別物だと思う。

 けど、その向こう見ずな自信だけは、俺と似ていた。

 だから、

「……上等じゃねえか」
「……え?」

 かつての俺によく似たコイツに、俺は右手を差し出した。

「手伝うぜ、お前の地獄行き。二人で強くなって、この世界をぶっ潰して、そんであの赤ローブをぶっ飛ばしにいこうじゃねえか」
「……いい、の?」
「そう言ってんだろ。お前から頼んできたクセに何言ってんだよ。
 実際、俺もアイツが気に入らねえんだ。お前みたいに重たい理由の持ち合わせはねーけどよ、何の罪もない連中を自分の身勝手で閉じ込めたその卑怯さが、俺には我慢ならねえってだけだ。
 絶対にこのゲームを生きて終わらせて、アイツをぶん殴る、このゲームに閉じ込められて、俺はそう決めたんだ」

 目的の一致ってヤツだろ。そう言って、俺は差し出した右手の掌をリーナに向ける。

 リーナは俺の掌と俺の顔との間で数度視線を彷徨わせていたが、やがて自分も右手を差し出して、俺の手に重ねた。

「……一護。改めて、よろしく、ね」
「ああ、こっちこそな」

 そう言うと、リーナは少しだけ笑顔を浮かべた。本当に淡い微笑で、でも確かに笑っていた。真っ白い肌に、ほんの少し、朱が差したように見えた。

 このゲームに囚われてから一か月。俺とリーナは今日この瞬間に、臨時ではない、本当のパーティーを組んだ。面子はたった二人だが、不安は欠片もなかった。コイツなら、きっと本当に強くなるし、俺ももっと強くなれる。根拠もなく、俺はそう思えた。

「ところで、一護。一つ頼みがある」
「なんだ」
「明日の朝ごはん、例のバケットサンドがいい。売って」
「それ今言うか普通。さっきまでのいい雰囲気が台無しじゃねーか」
「え、雰囲気とか気
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