暁 〜小説投稿サイト〜
Deathberry and Deathgame
Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 5. The dianthus and the strawberry
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りないの。私が望むような力を手にするには、他の人と同じことをしてるわけにはいかない」
「……お前、なにをする気なんだよ」

 思いつめたような、どこか危なっかしい表情を見せるリーナに、俺は真剣な声で問いかけた。

「一護は安全マージンって言葉、知ってる?」
「確か、ここまでレベルがあればそうそう死なないライン、のことだっけか」
「そう、このゲームにおいて、レベル上げの狩りの際には必ず安全マージンを取る。蘇生方法がない以上、それが当たり前。
 ……でも、私はそれを放棄する。現段階で戦える一番厳しいレベルの戦闘に飛び込む。格上との戦闘で、大量の敵との乱戦で、自分の戦闘技術と経験値を稼ぐ」
「……お前、そんなにまでして、強くなりてえのかよ。なんで、そこまで自分を追い込んでんだ」

 俺がそう訊いた瞬間、リーナの目が一気に険しくなった。涼やかだった翡翠の瞳に、怒りの炎が灯ったように見えた。

「……このゲームは、茅場晶彦は、私の世界を変えた。変えてしまった。現実のことを話すのはタブーだけど、今なら言える。
 私、病気で寝込んで中学を一年留年してて、やっと今年高校に入ったの。お父さんやお母さん、周りの人にいっぱい迷惑をかけた。だから、その恩を返したくて、学校でずっと頑張ってきた。
 だけど、誕生日祝いにこのゲームを買ってもらって、家族三人でログインするはずだったのに、私だけ先に行っておいでって言われて、そして、私がログインした五分後に、この世界から出られなくなった。
 あの時、現実世界の中継映像が流れたでしょ? その中に、私の姿があったの。病院のベッドに寝かされてる私と、その隣で泣いてるお母さんとお父さんが映ってた。あの優しい二人を泣かせちゃって、すごく申し訳なくて、涙が止まらなかった。でもそれ以上に、その原因を作った、茅場晶彦が憎くて憎くて仕方なくなった。私の優しい世界を、こんな仮想(ハリボテ)の世界に塗り替えたあの男を、殺したいくらいに私は憎悪した。いつか必ず、目に物見せてやる、そう決心した。
 だから、私は強くなる。
 強くなって、強くなって、この世界の何もかもを叩き壊せるくらいに強くなって、百層のボスを、茅場が作った世界の主を殺す。茅場が心血を注いだという、あいつの現身のようなこの世界を、私がこの手でぶっ壊す! そして、必ず現実に返って茅場晶彦を殴り倒す! それが叶う強さが身に付くというのなら、私はなんだってできる!!」

 すっかり暗くなった人気のない噴水広場に、リーナの大声が木霊した。まるで、この世界に飲み込まれていくかのように、残響が消えていく。
 息を弾ませるリーナが落ち着いてから、俺は静かに質問を重ねた。

「……わかってんのか、リーナ。安全マージンを捨てるってことは、一歩間違ったらすぐやられちまうよう
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