Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 5. The dianthus and the strawberry
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
そこらのベータテスターでは歯が立たないであろうレベルの体捌きや反射神経。
状況に応じた的確なスキル選択。
そして、巨大なボスを単身で相手取っても全く臆さない度胸。
斬撃に刺突を合わせたり、蹴りで太刀筋を捻じ曲げたりという出鱈目な闘い方は見ていて心底驚いたが、不思議と危なっかしさは感じなかった。まるで、今までずっとそうしてきたかのような戦い方は、一か月やそこらじゃ到底身に付かないような安定感を持っていた。
おそらく、他のVRMMOゲームでのプレイ経験か現実世界での格闘技、あるいは(彼の悪い目つきから考えて)ケンカの実戦経験が豊富なのだろう。それも、平均よりはるかに高いレベルでの。そうでもなければ、あの身のこなしの鋭さや攻撃の容赦の無さは説明できないと思う。
でも、その経緯は今は捨て置く。私が目を付けたのは、彼の『装備はビギナーなのに立ち振る舞いは戦いに慣れた強者のそれ』という在り方。
それは、私が求めていたベストな相棒そのものだった。
私はベータテスターの一人として、こうして最前線に出てきている。生きて帰って、何の変哲もない私の日常をぶち壊してくれた忌々しい茅場晶彦をこの手で殴り倒すために。そしてそのためには、誰かがクリアしてくれるのを待っていてはいけない。自分の力で生き延びて、自分の足で迷宮を踏破し、自分の手でボスを打ち倒さなければ。そう思い、独りで高みを求めて攻略に邁進してきた。
しかし同時に、独りでの攻略に無理があることを感じてもいた。
スイッチができるだけで攻略の幅は格段に広がるし、役割分担を行うことで、ソロプレイヤーである場合に欠かせない『ステータスのバランス意識』を過剰に気にする必要がなくなり、自身のステ振りに明確な方向性を持たせることが容易になる。意見の食い違いや経験値の分散、大所帯故の行軍速度低下などのデメリットが大きいためギルドに入る気はないが、一人くらい、私と相性がいいバトルスタイルのプレイヤーがいたら、と最近の攻略で感じることがあった。
そして、私の理想を満たす、彼と出会った。
初の攻略戦に出てくるという、攻略意識の高さ。
私と同じ、機動性を活かした立ち回り。
手数重視の私に欠けている、一撃の威力重視の攻撃。
そして、私が彼と組むことで、互いにメリットがある。
彼は私にその戦闘力を、そして私は彼にMMOのノウハウを、それぞれ与えられる。
幼少期からネットゲームに明け暮れていたおかげで、レベル上げ、スキル構成、武器選びに至るまで、一通りのコツは掴んでいる。彼自身は強いが、そういったステータス面でのロスが大きいように思う。闇雲にプレイするだけでは、いかに技術に長けていても、いつかはステータスという数
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ