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ファーストキスは突然に
8部分:第八章

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第八章

「その時は御前が勝ったのか」
「ああ、そうさ」
 次の日崇はまた友人と話をしていた。今度は教室でそれぞれ弁当を食べながら話をしている。ただし時間は二時間目の後の休み時間だ。
「それはな」
「それでナに仕掛けたんだ?」
「いや、先生が尾行してきたんで滅多なことできなかったんだけれどな」
 このことも言うのだった。弁当のおかずの一つ梅干を食べながらだ。
「すげえ顔で追っかけてきてたからな」
「それでか」
「そうなんだよ。まあキスの後はな」
「ホテルはないな」
「制服でホテルに行ったら流石にまずいだろ」
 流石に崇もそれはわかっていた。
「幾ら何でもな」
「間違いなく入り口で補導員呼ばれるな」
 彼は冷静に述べた。
「それからはだ」
「言うまでもないか」
「そうだ。だからそれはないな」
「だからねえよ」
 それはないというのである。
「安心しろよ。だからプーチン首相が尾行してきてるのに滅多なことできるかよ」
「それで河川敷で何をしたんだ?」
「タッチだよ」
 それだというのだ。
「まあ。胸はやばいから」
「いきなりそれは流石にないな」
「頬っぺたにな。タッチしてな」
「それだけか」
「そうだよ。それで逆襲のキスをしてな」
「セカンドキスだな」
 ファーストキスの次はである。そうなる。これは聞いている彼にとっては想像以上に大人しいものであった。
「それか」
「それで一勝なんだよ」
 彼は言った。
「どうだよ、それで」
「まあいいんじゃないのか?」
 友人は自分の弁当の中のソーセージを食べながら述べた。
「それでな」
「いいんだな、これで」
「いいさ。それで御前どうなんだ?」
「どうなんだって?」
「そのプーチン先生に見つかったんだろ」
 尾行してきたその先生である。
「それで大丈夫なのか?」
「ああ、昼休み生徒指導室に来いってな」
 ここで崇の顔が青いものになった。
「言われたよ」
「停学か?」
「それはないみたいだけれどな」
「学校の庭の草むしりだな」
「みたいだな。まあそれはな」
 あるというがそれでも顔はにこやかなものに戻った。
「幸せの後の些細な揺り戻しってやつだな」
「まあ頑張れ」
 こう言って崇を励ます。その日の放課後は確かに草むしりをした。しかしそれも恵美と一緒だったので楽しい時間になった二人であった。


ファーストキスは突然に   完


                 2009・12・15

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