暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八話 シミュレーション
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ションブースに入り、自分の学生番号だけを入れる。後はメインコンピュータが勝手に対戦相手を選択する。

 この1〜4の中で1と4は対戦相手が判らない。100部屋あるシミュレーションルームのどこかにいるのだが、極端な事を言えば自分の隣にいる人間が対戦相手の可能性もあるし、コンピュータが対戦相手という可能性もある。

 当初、シミュレーションは誰が対戦相手か判るようになっていた。しかし帝国暦400年頃、いまから80年ほど前に対戦相手が判らないようにしたのだ。理由は士官学校で起きた殺人事件だった。自由惑星同盟との戦争が始まってから、士官学校ではシミュレーションの成績を重視してきた。

戦略科であればその度合いはさらに強くなる。その結果勝つ事を重視するあまり敗者を侮辱、愚弄する風潮が起きた。勝敗は実力によるものだ。敗者は実力をつけて雪辱すればよい。しかし雪辱できなかった場合はどうなるか?

当然侮辱は強まるだろう。そして敗者は勝者を憎悪するに違いない、殺したくなるほどに……。80年ほど前にそれが起きた。何度目の敗戦なのかはわからないが、口汚く、得意げに自分を罵る勝者を刺殺したのだ。メッタ刺しだったという。

止めようとした人間も刺された。この事件で3人が死亡、1人が重傷、2人が軽傷を負った。重傷者は軍務に就くのは無理と判断され最終的に殺人者を入れれば5人の学生が士官学校からいなくなった……。これ以後対戦相手は判らなくなった。教官はメインコンピュータの情報から対戦相手が判るが彼らも教えない。教えたことが判れば軍籍を剥奪されるのだ。既に前例がある。

「この間、君は少し遅れてシミュレーションルームに入ってきただろう」
「ええ、ちょっと具合が悪かったので」
「君の2つ後ろのブースに俺がいたんだ。なかなか対戦相手が決まらないんで、妙だと思っていた。其処に君が来てブースに座るとすぐ対戦が始まった。そして終わるとすぐ君は部屋を出て行った」
「それだけじゃ判らないでしょう。偶然かもしれない」
「もちろんそうだ。だから君の対戦記録を調べたよ。それで判った、君だとね」

対戦相手は判らないのだが、たった一つ調べる方法がある。ミュラーが言った対戦記録だ。生徒のシミュレーション記録は全てメインコンピュータに記録されている。そして記録の閲覧は誰でも可能だ。つまりこの記録を調べれば自分の対戦相手を見つけることができるのだ。

例の事件の後、閲覧も不可能しようという意見が出たのだが2つの理由で却下された。第一に授業では5,000人以上がシミュレーションを行う。5,000人のシミュレーションデータを調べ、そこから自分の対戦相手を探すのは不可能だということ。

もう1つは相手の癖、弱点を調べ、それを突く作戦を立てるのは用兵の基本であり、その能力を摘むような
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ