第十四話:骸骨の刈り手、禍ツ神
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っていた。
「な、んだよ……コイツは…」
現れたのは四つ腕の怪物。
遠目でも分かるほどに隆起した全身の筋肉に、大木のような脚。両の腰には日本刀、背には二振りの長槍を背負っている。
「『The Evile God』。第九十九層にて、君達が戦う予定だったボスだ」
「……なるほど。お前を倒すには、まずこいつをどうにかしなくちゃならないということか」
「そういうことだ。さあ、挑み給え。最強最悪の神に。なんなら、二人……いや、三人で挑んでも構わない。
ああ、安心してくれたまえ。HPは大幅に減らしてある。君達が死力を尽くして戦えば、或いは届くかもしれない」
並び立つレンとキリトの背中に、誰かの手が添えられた。それが誰のものなのか、二人には振り返らずとも分かった。
「私も、戦うよ」
「俺も戦える」
「……ああ、ここまで来たんだ。付き合ってもらうぞ」
左手に握っていたクリミナルエスパーダが霧散し、入れ替わるようにエスピアツィオーネが右手に収まる。
第九十九層にて待ち受けるはずだった禍ツ神は、ただ黙して眼下にいる三人を見降ろしている。
その悠然たる佇まいは正に神の如く。見上げるだけで沸き立つ恐怖心に、この場にいるプレイヤー達は呑まれていた。それは体の自由の利くキリトやアスナも例外ではない。気圧されながらも気丈に立ち続けるが、いつ膝をついてもおかしくはなかった。
そんな中で。
たった一人。まるで怯える二人を庇うように、レンは一歩前に踏み出した。
禍ツ神の炎の如き眼光が白い姿を捉える。
「この世界に来て、数え切れない程の修羅場を潜り抜けてきた。
どうしようもない状況に、死を覚悟した事だってあった」
禍ツ神は動かない。ただただ沈黙を保ち続け、まるで眼下の少年の覚悟を試すように屹立する。
「だが、オレはここで生きている。
そして、これが最後だ」
贖罪の剣を握る手に、かつてない力が篭る。
そう、これが最後。
あまりにも濃い二年間。ただの日常が死と隣り合わせの日々に変わってから、ただ只管に足掻きつづけてきた。それが、これで終わる。終わらせる。
「あの怪物はオレが抑える。ラスボスはお前達に任せるぜ。オレが死ぬ前に、速攻で終わらせてくれよ」
「………ああ」
「任せて」
キリトとアスナから怯えが消えた。代わりに浮かべたのは、並び立つ英雄と同じ不敵な笑み。
「行くぞ、振り返るなよ」
終幕の刻は迫る。されど生きて帰れる保証などどこにもなく。
抗うしか能のない哀れな人間は、この絶望を如何にして振り払うのか。
それとも、ただ、呑まれ行くのみか。
待ち構えるは禍ツを纏い
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