Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 3. Hunglina in the Arena
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、既に短剣を抜いて後ろ手に持っている辺り、やる気はあるようだ。俺も一応、それに合わせて抜剣してある。
「……最後の確認」
周りの緊張感とは無縁の淡白さを持った、しかしはっきりとした口調でリーナが声をかけてきた。俺は頭一つ分低い位置にある彼女の翡翠の瞳を見やる。
「なんのだ」
「今日の私たちの仕事について。手順は三つ。一護がセンチネルを引き付ける、スイッチする、私が一撃入れて離脱する。その繰り返し。オーケー?」
「ああ、オーケーだ」
そう、今日の俺らの仕事はボスの相手……ではなく、その取り巻きの始末だ。全部で三体の『センチネル』を、他の二つの小隊と一緒に一対ずつ受け持つ。本当はボスの相手にしたかったんだが、遅刻した身でワガママは言えなかった。
にしても、雑魚の相手なんて隊一つでよくねえか、と思ったんだが、リーナ曰く、ボス本体を叩く途中で本隊に横やりを入れられる危険性を潰すには妥当な判断、とのことだった。
『別に圧勝する必要はない。本物の命がかかっている以上、無理をしないで手堅く確実に仕留めるのが筋』
特に序盤はビビってる人も多いから尚更、そう淡々と言い切ったリーナの顔には、ビビリの欠片も見受けられなかった。確かに、全員が全員コイツみたいに恐怖を振り払って戦えるとは思わないし、思えなかった。
誰だって、命の危険を感じればビビる。俺だって、昔浦原さんに殺されかけた時は恐怖で逃げた。今まで戦いに縁が無かった奴なら、逃げるどころかパニックで動けなくなったり、最悪そのまま失神して倒れちまう可能性だってある。
ただボスを倒すだけじゃなく、全員が生き残って勝つには、かつての俺のような少人数で敵の本拠地に飛び込む覚悟よりも、注意に注意を重ねて築いた堅実な作戦と統率が必要なんだろう。こういう感じの集団戦の経験が無い以上、ここは大人しく案に従った方が良さそうだ。ボスに勝つためにも、ここにいる仲間を生きて帰すためにも。
「行くぞ!!」
視線を前に戻すと、ディアベルの前にあるボス部屋の大きな扉がゆっくりと開いていくところだった。金属の軋む嫌な音と共に開け放たれた薄暗い部屋に、ディアベルを先頭に全員で慎重に入っていく。
最後の一人が入りきった瞬間、部屋が一気に明るくなった。幅二十メートル、奥行きは百メートルはありそうな大部屋が、俺たちの目の前に現れる。
その直後、体長が五メートルを超えそうな赤銅色の肌の巨漢のコボルドが轟音と共に姿を現した。
右手には巨大な斧、左手には大釜に持ち手をつけたような形状のバックラー。そして、上部に表示された四本のHPバーの上の『イルファング・ザ・コボルド・ロード』の文字。コイツが、俺たちの記念すべき初ボスってワケだ。周囲には、取り巻きのセンチネルが三体、ポールアックス
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