Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 3. Hunglina in the Arena
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「…………は?」
反射的に腑抜けた声を出してしまった俺の横で、エギルが額に手をやってため息を吐いた。もう一度彼女を見返しても、表情は全く変化しない。どうやらジョークじゃないみたいだ。
「……とまあ、こういう奴なんだ。普段は真面目な奴なんだが、腹が減ってるときは頑なに自己主張しかしない。さっきまでかなりの数の男が声をかけていたんだが、ずっとこの調子でな。結局、誰とも組まず終いってわけだ」
「お腹減った」
「……なんでその体たらくで会議場に来ちまったんだよ。メシ食ってから来い」
「これでも会議前は会話が成立していたんだ。それが、パーティー決めの時にはこうなっていた。多分、食った量が少なかったんだろ」
「お腹減った」
「難儀なヤツだなオイ」
「お腹減った」
「…………」
「お腹減った」
「おい、とりあえずこのリピート再生止めるにはどうすんだエギル」
「簡単だ、食い物を与えれば黙る」
赤ちゃんかコイツは。
でもまあ、食い物で静かになるならいいか。とりあえず余ってる黒パンでも食わせれば解決……、
「ああ、ちなみに、こいつは美味いものしか受け付けない。その辺で売ってるパンや干し肉は厳禁だ」
しなかった。なんつーワガママ。
「飢えてるくせにえり好みする余裕はあんのか」
「のようだな。さっきもNPCショップで売ってるジャーキーで気を引こうとした連中が、まとめてシカトされていたのを見た」
「マジで難儀だな…………ったく、仕方ねえ」
俺はアイテムウィンドウを開き、その中の一つをオブジェクト化。紙袋に入ったそれをリーナの目の前に放ってやった。危なげなくキャッチしたリーナは、それと俺の間で視線を数度彷徨わせたが、すぐにアイテムを開封した。
「……バケットサンド?」
「ああ、そうだ。一応非売品」
「……手作り?」
「一部は」
嘘は吐いてない。具材を挟むトコだけは自分でやった。後は殆ど既製品だけど。
コレはリーナが言ったように、俺がオリジナルで作ったバケットサンドだ。具材はレタス、トマトっぽい味の紫の野菜、謎のバーベキューソース、厚切りのベーコン、の四つ。バンズはその辺に売ってた安物のバケットだ。前者二つもはじまりの街の市場的なところで売ってた。
で、残りの具材の内、ベーコンの出処は例のデカイノシシだ。あのグロい肉塊の処分に困った俺は、はじまりの街の北部地区にあった肉屋で売っちまおうとした――んだが、そこで売る以外にも『加工する』って選択肢があるのを知り、それで肉塊の内半分を加工してコイツができた。ちなみに、ソースはセットで付いてきた。「希少な肉を売ってくれたお礼だ」って言ってたから、多分レアものだと思う。
「……いただきます」
「ああ、食ってくれ」
礼儀正しく
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