Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 1. Blue boa is comin'
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惰性で避けようとした俺は、左右に避けられるスペースがないことに気づいた。しかも、イノシシが繰り出したのはもう何度目かもわからないくらいに見た突進ではなく、牙に青白い光を灯した状態での飛びかかり。突進みたいに飛び越えて回避するわけにはいかない。無駄に大きな図体が俺目掛けて急速に落下してくる。
ヤバい、このままじゃ死ぬ。コイツを何とかしなきゃ、絶対に死ぬ。
何とかして、コイツと斬らなきゃダメだ。
――例えば、そう、月牙で斬り飛ばすとか。
そう思った瞬間、身体が反射で動いた。左足を引き下げ、剣を身体の脇に構え、腰を沈める。
切っ先に力を集中させ、視線が相手を捉えた瞬間に、
「月牙天しょ――うおぅっ!?」
斬撃を飛ばす――つもりで振り抜こうとした瞬間に、身体が勝手に動いた。ギュキュイーン、という効果音と共に腕が高速で旋回し、青白い光を帯びた刃が空を裂く。
咄嗟に地面を踏みしめた直後、イノシシの腹に蒼白の一撃が直撃。重い衝撃が全身に圧し掛かってきたが、そのまま押し切り、イノシシを弾き返した。視界の端に見えた敵の体力ゲージは僅かに、でも確かに減っていた。
発動したのは偶々っぽいが、間違いない。今のは《ホリゾンタル》だ。
俺は今、確かにソードスキルを発動できたんだ。
その感覚が消えない間に、俺の足は地面を蹴っていた。体勢を立て直すイノシシとの距離を詰め、剣は上段に構える。ついさっき試した《バーチカル》の構えだ。
一度目は失敗した。けど、一発成功した今なら……!
「絶対、撃てるっ!!」
果たして、スキルは発動した。眩いオレンジのライトエフェクトを帯びた剣が、振り返った直後のイノシシの顔面を両断した。苦悶の絶叫を上げるイノシシにダッシュの勢いそのままに飛び膝蹴りを叩き込み、もう一度『ホリゾンタル』を撃ち込んでふっ飛ばした。
「……何となくわかったぜ。要は、月牙と同じ要領ってことだ」
分かればどうってことはない。要するに、斬月を振るう時と同じようにやればいいんだ。
考えて見りゃそうだ。斬月をただ振るだけでは月牙を打てないように、普通に剣を構えただけでスキルが発動するわけがない。それで発動しちまってたら、普通に剣を振ってる最中に構えが一致してしまった瞬間、勝手にスキルが暴発するだろう。それじゃ戦闘にならない。
このゲームの中でスキルを使うのにも、斬る意識、スキルを放つという自分の中のイメージが要るんだ。斬月でも「月牙天衝を撃つ」という意志が要ったのと同じこと。仮想だろうが現実だろうが、大切なのは剣を振るい、技を行使し、敵を倒すという自分の意志、もっと強い言い方をすれば『覚悟』が必要なんだ。
「ったく、ここがゲームの世界だからって
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