Side Story
遥か昔の恋話
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「ウェルスと結婚できた理由？」
随分と唐突に、不思議な事を尋かれてしまったな。
神々に仕える巫マリアを仲間に加えて数ヵ月。
私達四人は旅の途中、二階建て木造住宅が十軒ほど並ぶ山間の小さな村に立ち寄った。
家畜と言えば数匹の鳥と牛三頭、畑と言えばトマルとポトルが生っているくらいで、正直旅人を四人も迎え入れるのは食料事情的に死活問題だろう。だが、村人達は快く一夜の寝場所を貸し与えてくれた。この時世、村や町では稀なる厚意。後日、労働を以て恩を返さなければなるまい。そうと決まれば朝は早いと月が顔を出す前に男二人女二人、別々の部屋で就寝の支度を整えていたのだが。
「コーネリアさんは私と同じ年齢だと伺いましたが、それでは人間世界の規律に照らし合わせると早婚で違法になってしまいますよね？」
ああ。マリアが尋きたいのは、動機じゃなくて認可の問題か。
「そう。私達は本来、法的にはまだ夫婦認定されない。子供が子供を二人産んだ、それだけが事実になる」
古く簡素な木造のベッドに座り足裏を床に突けて、私とマリアは向かい合う。
ベッド二つとクローゼット一つ、窓の下に置かれたサイドテーブルだけで埋まってしまうこの部屋は、ベッドから膝を下ろした状態でもぶつかる程度に狭い。
純白の翼を背負い上質な長衣を纏った清廉なる女神が、天井に蜘蛛の巣を見付けてしまう小部屋に居るのは、あまりにも違和感が大きいのだが……まぁ、直ぐに慣れるだろう。彼女は私達の仲間なのだし。
「ではやはり、お二人は正式な夫婦ではないのですか？」
「ちゃんとした夫婦ではある。私はウェルスの妻だし、ウェルスは私の夫。人間社会はちょっと複雑でね……マリアの疑問を解消するには「村」について話す必要があるな。長くなるから、横になってても良いよ」
「疲れたら、そうさせていただきます」
「ん」
ほわりとした顔立ちの割りに、物の言い方はハキハキしてる方だ。お嬢様育ちは自他共に認める所だが、粗野な私達に付いて来ようとする心の強さは、さすがアルフリードが認めた女。
こういうお嬢様なら、私も嫌いじゃない。
私が育った村は、辺境ながらも比較的城下街の近くに在る。
背後を山、両脇を深い森、前面を林と湖に囲まれ、「村」と呼称される規模の内ではそこそこ良質な暮らしが保証されていた。
「しかし人間って生き物は、見える範囲により豪華なモノがあると、どうしてもそっちを選びたがるらしくてね。特に、ある一定の時期を迎えた若い男共は「俺はこんなシケた場所に収まる器じゃねぇんだよ！」と、何の根拠も無く人が多く集まる場所へ行きたがるんだ。私の父みたいに」
夢を持つのは大いに結構。私も誰も、その点に反対する者はいない。
が。
そうした人間の大半は、実生活に於いて自らの責務を
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