Side Story
遥か昔の恋話
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ウェルスさんとは、どうして結婚できたのですか?」
「ウェルスと結婚できた理由?」
後は眠るだけというタイミングで、マリアが首を傾げながら私を見る。
ずいぶんと唐突に、不思議なことを尋かれてしまったな。
神々に仕える天神の一族、最後の巫マリアを仲間に加えて数ヵ月。
私とウェルス、アルフリードとマリアの四人組は、魔王を討つ旅の途中、二階建て木造住宅が十軒ほど並ぶ、山間の小さな村に立ち寄った。
家畜と言えば、鳥が数羽と、牛が三頭。
畑と言えば、トマルとポトルが生っているくらいで。
正直、旅人を四人も迎え入れるのは、食料事情的に死活問題だろう。
だが、村人達は快く一夜の寝場所を貸し与えてくれた。
このご時世、村や町では稀なる厚意。
後日、労働をもって、この恩を返さなければなるまい。
そうと決まれば朝は早いと、月が夜空で輝きだす前に、男二人と女二人、別々の部屋で就寝の支度を整えていたのだが。
「コーネリアさんは私と同じ年齢だと伺いましたが、それでは人間の世界の規律に照らし合わせると、早婚で違法になってしまいますよね?」
ああ、なんだ。
マリアが尋きたいのは動機じゃなくて、認可の問題か。
「そうだね。私とウェルスは本来、法的には夫婦認定される年齢じゃない。子供が子供を二人も産んだ。それだけが事実になる」
古く簡素なベッドに座り、足裏を床に突けて、私とマリアは向かい合う。
ベッド二つとクローゼット一つ、窓の下に置かれたサイドテーブルだけで埋まってしまうこの部屋は、ベッドから膝を下ろした状態でもお互いの足がぶつかる程度には狭い。
純白の翼を背負い上質で高級な法衣を着た清廉なる女神が、天井の片隅に蜘蛛の巣を見つけてしまう小部屋でくつろいでいるという図は、あまりにも違和感が大きいのだが……
まあ、すぐに慣れるだろう。
彼女も私達の仲間なのだし。
「ではやはり、お二人は正式な夫婦ではないのですか?」
「ちゃんと公認を得た夫婦ではあるよ。私はウェルスの妻だし、ウェルスは私の夫。人間社会はちょっと複雑でね……。マリアの疑問を解消するには、『村』について話す必要があるな。長くなるから、横になってても良いよ」
「疲れたら、そうさせていただきます」
「ん」
ほわりとした顔立ちのわりに、物の言い方はハキハキしてるほうだ。
お嬢様育ちで世間知らずな面は自他共に認めるところだが、粗野な私達に付いてこようとする心の強さは、さすがアルフリードが認めた女。
こういうお嬢様なら、私も嫌いじゃない。
私が育った村は、辺境ながらも比較的、城下街の近くにある。
背後を山、両脇を深い森、前面を林と湖に囲ま
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ