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逆さの砂時計
Side Story
遥か昔の恋話
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「わたしを作ったじかんを、待ってるの」

 両手を握り、歯を強く噛みしめて。
 幼い私は、村の入り口から湖の先をじっと見つめ続ける。

 ……って、オイこら。
 背中を抱きしめるな、子供版ウェルス。
 こんな小さい頃にはもう発情してたのか、お前。

「『コーネリア』は、まだできてない」

 は?

「じゃあ、わたしはなに? ここにいるわたしは、なに? わたしはここにいないの?」
「違う。『コーネリア』は、これから作っていくんだ。ここに居るお前は、人の形をしてるけど、まだ『コーネリア』じゃないんだ。だから待っててもお前を作った時間は来ない。まだ、お前は作られてないから」

 …………そうか。

「なら、わたしはなに? どうしたらわたしを作ったじかんに会えるの?」
「朝起きてご飯を食べて仕事をして、お昼ご飯を食べて休んで手伝いをして夜ご飯を食べて、それから、ぐっすりと眠るんだよ。あいさつも忘れずに、毎日を喜怒哀楽で染めていくんだ。そして『コーネリア』になればいつかはお前を作った時間とも会える」

 これは、『私を作った時間』……
 『母』に会いたくて駄々を捏ねてる私と、それをなだめるウェルスだ。
 こんな時期があったなんて、とっくに忘れてた。

「いつ? わたしが『コーネリア』を作れるのはいつなの? いつになればわたしを作ったじかんと会えるの?」
「分からない。でもお前が『コーネリア』を諦めたり棄てたりしたら絶対に会えない。だから俺と来い。俺がお前を『コーネリア』にしてやる。いつかお前を作った時間に会わせてやるから」
「ほんとう?」
「ああ。俺は絶対にお前を置いて行かない。お前を置いて消えたりしない。お前は俺の『コーネリア』になれ。俺はお前のウェルスになるから」
「わたしはウェルスので、ウェルスはわたしのなの?」
「そうだよ」

 ちょっと待て、子供版ウェルス。
 お前、私より一つ歳上ってだけだろ。
 こんな小さい時から、既に独占欲を見せてたのか?

「じゃあ、わたしはここで……、ひとりじゃ、ないんだね……」

 頷くな、純真な私。
 いたいけな子供に、なんてことを刷り込んどるんだ、バカ男!

「傍に居るよ。何があっても、俺が傍に居る」
「……うれしい……。あったかい、なぁ……」

 私の体がウェルスの腕から滑り落ちる。
 顔が赤い。熱か。
 覚えてないのも納得だ。
 この時の私は多分、朦朧として……

「だから、俺を置いて行かないで」

 幼い私を抱き起こして、すがりつくように抱きしめる子供版ウェルス。
 小さな肩が、震えてる。



「…………阿呆め」

 そっと開いた目に、見慣れない天井が映った。
 隣のベッドには、気持ち良さそうに眠
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