Side Story
遥か昔の恋話
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字は見当たらない。これからもウェルスと共に在る時間を疑ってないし、どちらかが途絶えたら残ったほうは壊れる……気がする。
これをマリアに言っても、彼女の潔癖な思考には解答として刻まれたりしないだろう。
絆は理由を前提に繋がるのだと信じられる純粋さ……理由を必要としない暴力と残酷さに、何処まで形を保っていられるか。
せめて彼女だけでも浅ましい現実に侵食されてしまわないよう、願うばかりだ。
「さぁ、明日は農地整備の手伝いだ。マリアは特に体力が無いんだから、もう寝よう」
「はい」
横になりつつ明らかに納得してない顔をシーツに埋め、無理矢理意識を沈めるマリアを見届けて。私もごろんと仰向けになる。
程好い薄暗さと静けさに、ご機嫌な睡魔が釣られてやって来た。
柔らかな闇へ落ちる錯覚に身を委ねれば、懐かしい景色に一人立つ幼い自分を見付ける。
背丈からして、十歳になる前か?
「なにを待ってるんだ?」
遠くを見つめる自分の背中に、当時のウェルスが声を掛ける。
はて。こんな一幕に覚えは無いが、何の夢だ?
「わたしのじかんを待ってるの」
?? 私の時間?
「わたしを作ったじかんを待ってるの」
両手を握り、歯を強く噛み締めて。
私はじっと、村の入り口から湖の先を見つめ続ける。
……って、オイこら。背中を抱き締めるな子供ウェルス。こんな小さい頃にはもう発情してたのか、お前。
「コーネリアはまだできてない」
は?
「じゃあ、わたしはなに? ここにいるわたしはなに? わたしはここにいないの?」
「違う。コーネリアはこれから作って行くんだ。ここに居るお前は人の形をしてるけど、まだコーネリアじゃない。だから、待っててもお前を作った時間は来ない。まだお前は作られてないから」
…………そうか。
「じゃあわたしはなに? どうしたらわたしを作ったじかんに会えるの?」
「朝ご飯を食べて仕事をして、お昼ご飯を食べて休んで、手伝いをして夜ご飯を食べて十分に寝るんだよ。挨拶も忘れずに、毎日を喜怒哀楽で染めるんだ。そうしてコーネリアになれば、お前を作った時間ともいつかは会える」
これは、私を作った時間……「母」に会いたいと駄々を捏ねる私と、それを宥めるウェルスだ。
こんな時期があったなんて、とっくに忘れてた。
「いつ? わたしがコーネリアを作れるのはいつなの? いつ、わたしを作ったじかんと会えるの?」
「判らない。でも、お前がコーネリアを諦めて棄てたら絶対会えない。だから、俺と来い。俺がお前をコーネリアにしてやる。いつか、お前を作った時間に会わせてやるから」
「ほんとう?」
「ああ。絶対にお前を置いて行かない。お前は俺のコーネリアになれ。俺はお前のウェルスになるから」
「わ
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