Side Story
遥か昔の恋話
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問題も違和感も無かった。子供達が産まれても、アルフリードと一緒に村を離れるまではしっかり面倒見てたし。万が一にも育児を放棄してたら、大減点だったけどな」
ウェルスは意外にも子供好きだ。
取り上げた赤子を相手に顔面をだらしなく弛めて
「コーネリアとよく似た美人に育つ素質を備えてるぞ」
などとほざいた時には、さすがに気持ち悪いと思ったが。
ヤツには何よりも、一つの家庭を築く自負と覚悟と誠意があった。
そうでなければ、ただの色情魔。
私が心を許すことなどなかったと断言できる。
「最初から好きだったのでは」
「それはない」
日頃から女と見れば場所も人目も憚らず口説きにかかるゆるゆるな男に、好感なんぞ持てる筈がない。
「いつからとか、ハッキリしてないんだ。気付いたら隣に居るのが当然で、居ないほうが不自然。否応無しの夫婦。つくづくおかしな経緯に見えるかも知れないけど、私達の場合は、そんなものだったよ」
マリアは複雑な面持ちで「そうですか……」と小さく頷いた。
認可の疑問は解けたけど、今度は動機に疑問が湧いた、か。
申し訳ないが、それには本当に答えようがない。
ウェルスのどこが好きなのかと問われても、首をひねるしかないのだ。
もしかしたら私は、アイツ個人よりも、アイツと一緒に積み重ねた時間を愛してるのかも知れないな。
少なくとも、そこに『不運』と『不幸』の文字は見当たらない。
これからもウェルスと共にある時間を疑ってないし。
どちらかが途絶えたら、残ったほうは壊れる。
そんな気がする。
これをマリアに言ったとしても。
彼女の潔癖な思考には、解答として刻まれたりしないだろう。
絆は理由を前提に繋がるのだと信じられる、その純粋さ。
理由を必要としない暴力と残酷さに、どこまで形を保っていられるか。
せめて彼女だけでも、浅ましい現実に侵食されてしまわないようにと。
そう願うばかりだ。
「さあ、明日は農地整備の手伝いだよ。マリアは特に体力が無いんだから、もう寝よう」
「はい」
横になりつつ、明らかに納得してない顔をシーツに埋め、無理矢理にでも意識を沈めるマリアを見届けて。私も、ごろんと仰向けになる。
ほど好い薄暗さと静けさに、ご機嫌な睡魔が釣られてやってきた。
柔らかな闇へと落ちていく錯覚に身を委ねれば。
懐かしい景色の中に一人で立っている、幼い頃の自分を見つけた。
背丈からして、十歳になる前か?
「なにを待ってるんだ?」
遠くを見つめる自分の背中に、当時のウェルスが声を掛ける。
はて。こんな一幕に覚えはないが、何の夢だ?
「わたしのじかんを待ってるの」
?? 私の時間?
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