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逆さの砂時計
Side Story
遥か昔の恋話
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らいにはしてもらえるだろう。
 「少々筋がブレたか。簡単に纏めると、地方婚の慣習が私達の代まで続いてて、私の相手に指定されたのがウェルスだったって話だよ。だから私達は地方婚の制度上ちゃんとした夫婦だし、国の法律上では認可される年齢じゃないから、正式な夫婦とは言えない」
 内縁の夫婦って表現のほうが解りやすかったか?
 「……今のお二人が互いを大切にしているのは私にも伝わってますが……結婚相手を勝手に決められ、押し付けられて、嫌だとは思わなかったのですか?」
 そういえば、マリアも危うく結婚を強要される所だったな。
 確かに、好意も敬意も持てない相手に性交を求められるのは、男でも女でも嫌だろう。
 ついでに子育てまで約束されてるもんだから、精神的に穏やかな家庭の構築は初めから不可能に近い。
 普通なら。
 今思い返しても、私達は普通じゃなかった。
 「全然。相手を決められたその夜には好意とか関係無く自然に夫婦生活を始めてたし。寧ろ、変な虫が寄って来る前に顔見知りの盾が出来て幸運だったよ」
 「盾って……」
 「ん。最初はそんな認識だった」
 寝てる私をいきなり抱きに来たウェルスもキチガイ過ぎだが、「あーはいはい」とあっさり受け入れた自分も相当おかしい。
 その理由が、容姿目当てに如何わしい視線を投げて来る男達避け……というのもどうなのか。
 「ウェルスは言動こそバカだけど、半端な仕事を嫌う真面目さもあったから。夫として迎えるにあたって、特に問題も違和感も無かった。子供が産まれてもちゃんと面倒見てたし。育児を放棄したら大減点だったけどな」
 ウェルスは意外にも子供好きだ。取り上げた赤子相手に顔をだらしなく弛めて「コーネリアに似た美人に育つ素質を備えてるぞ」などとほざいた時には、さすがに気持ち悪いと思ったが。
 ヤツには何よりも、一つの家庭を築く自負と覚悟と誠意があった。
 そうでなければただの色情魔。私が心を許すことなど無かったと断言できる。
 「最初から好きだったのでは」
 「それは無い。」
 日頃から女と見れば所構わず口説きにかかるようなユルい男に、好感なんぞ持てる筈がない。
 「いつから……とか、ハッキリしてないんだ。気付いたら隣に居るのが当然で、居ないほうが不自然。否応無しの夫婦。つくづくおかしな経緯に見えるかも知れないけど、私達の場合はそんなものだったよ」
 マリアは複雑な面持ちで「そうですか……」と小さく頷いた。
 認可の疑問は解けたけど、今度は動機に疑問が湧いた、か。
 申し訳ないが、それには本当に答えようがない。ウェルスの何処が好きなのかと問われても、首を捻るしかないのだ。
 もしかしたら私は、アイツ個人より、アイツと積み重ねた時間を愛してるのかも知れないな。少なくとも其処に「不運」と「不幸」の文
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