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逆さの砂時計
Side Story
遥か昔の恋話
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れ、飲食には事欠かず。
 城下街との間で商業取引が行われている為に、大きな道路も整備されて。
 村と呼称される規模の内では、そこそこ良質な暮らしが保証されていた。

「しかしまあ、人間って生き物は、見える範囲により豪華なモノがあると、どうしてもそっちを選びたがるらしくてね。特に、ある一定の時期を迎えた若い男共は、俺はこんなシケた場所に収まる器じゃねぇんだよ! と、何の根拠も無く、人が多く集まる場所へ行きたがるんだ。私の父みたいに」

 夢を持つのは大いに結構。
 私も誰も、その点に反対する者は居ない。

 が。
 そうした人間の大半は、実生活において自らの責務を果たせていないのが実状だ。
 畑仕事もなあなあで、家に帰れば飯があるのは当然だと思ってる。
 進んで家事を手伝う気概も見せず、両親や兄弟姉妹を労るどころか、雑に衣を脱ぎ散らかしては放置し、代えはどこだと人任せ。
 いかにして自分だけの時間を確保するか、それにしか頭が回らない。

 つまり、自分の足下すら自力で固められないズボラ共が、世話になってる相手を足蹴にして高飛びを夢想しちゃってるわけだ。
 そんなお坊っちゃまに何ができると嘲笑いながら、ガンバッテミレバ? と見送る女達の年齢も。
 しかし迷惑なことに、その夢想家共のせいで、年々狭められていた。

「出生率の低下、ですか」
「そう。若い男が村を出れば、子供が産まれる確率も当然落ちる。働き手が居なくなれば、村の経済も悪化の一途。すると出稼ぎの必要が生じて、村はあっという間に老いと幼さで包まれてしまう。過疎ってヤツだね」

 そんな環境下で考え出された苦肉の策が。
 適齢期以下の女子の結婚と、未亡人もしくは離婚経験者の再婚。
 人が少ない場所だからこそ独自に発展させるしかなかった、言ってみれば『地方婚』だ。

「国の政治機関が発布する法律とは反しているが、これが不思議な話でね。夢想家共とは真逆で、上の人間の大半は自分の足下……つまり、本人直轄の領地にしか目を配らない。要するに、黙認状態さ」

 村を出ていく前の相手に。
 自分の仕事に誇りを持って残った相手に。
 ごく稀に訪れる移住者達を相手に。
 都に出て夢破れた挙げ句、自分の言動に責任を持たないまま、厚かましいツラをぶら下げてきた出戻りを相手に。
 幼い未婚の女達は、望まぬ結婚を押し付けられる。

 それを拒絶して出ていこうとする若者達も当然男女問わずいるんだから、悪循環に拍車を掛けるのは、傍目にも明白なのだが。
 当事者達は生き残る為に必死だ。

「地方婚自体は、別段珍しくない。世界中どこでも普通に行われているし、早ければ、五歳前後の女の子が妊娠した例もあるらしい。異常な性徴速度も気にはなるが。どう考えても、理解と同意があっ
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