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バレンタインに黒薔薇を
5部分:第五章

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第五章

「薔薇が」
「薔薇ね」
「それなのね」
「その通りでしてよ」 
 やはりそれだというのである。薔薇だと。
「薔薇はまさに愛の証」
「それは確かにね」
「薔薇もまたね」
「それを出すのはどうでしょうか」
 こう皆に問うのであった。
「その薔薇を」
「いいと思うわ」
「それはね」
「そうですの。それでしたら」
 それを聞いて意を決した顔になる彼女だった。
 これで話はおおよそ決まった。家に帰るとだった。彼女はすぐに台所に入った。大きく様々な設備が整っているその台所にだ。
 そしてそこに入って。すぐに言うのであった。
「チョコレートを作りますわ」
「あら、そうなの」
 それを聞いた母はまずはのどかに返した。
「そういえばバレンタインだったわね」
「話は聞かせてもらいました」
 制服の上にそのままエプロンを着けている。鮮やかな紅いエプロンである。 
 それを着てであった。戦闘開始だ。しかし素材は。
「冷蔵庫開けて」
「そこにありますのね」
「チョコレートは何時でもあるわよ」
 彼女と全く同じ顔の母の言葉である。
「トッピング材料もね」
「そうですの」
「それによ」
 母はさらに言うのであった。まるで何もかもがわかっているという様にである。
「作る材料もね」
「それもありますの」
「そうよ、何でもあるわ」
 あらためてこう娘に告げるのであった。
「何でもね」
「でしたらすぐに」
「そうよ、どんなチョコレートでもできるわ」
 まさにそうだというのである。
「わかったら。いいわね」
「はい、わかりましたわ」
 強い顔で頷いての言葉であった。
「それでは」
「頑張りなさい」
「いざ勝負ですわ」
 エプロン姿のまま燃え上がる彼女であった。
「今より」
「それでどんなチョコレートを作るのかしら」
「薔薇でしてよ」
 これであると。母に対しても告げた。そのキッチンに素材と調理器具をこれでもかと並べたうえで。そのうえでの言葉であった。
「それを作りますの」
「薔薇のチョコレートを」
「そう、薔薇を」
 また言うのであった。
「今からやりますわ」
「じゃあ頑張ってね。ただ」
「ただ?何ですのお母様」
「晩御飯の時間までには仕上げておいてね」
 こう注文をつけたのである。
「そうでなければ晩御飯の時は一度中断してね」
「わかりましたわ。その時は」
「貴女が晩御飯作ってくれるのね」
「はい」
 母のその質問には毅然として答えたのだった。

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