シュウアク――英雄譚ノ始マリ
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れが蠢いていた。
「ルァァァアアアアア――!」
触手の中心から莉子が上がる。
莉子の声だ。
彼女の喉が、この獣の様な声を発している。
想像しただけで吐き気がした。
「僕は……強くなって……ヒーローになって……あれ?」
莉子は、生きていいはずだった。
いつか自分が堪えられなくなった時は、要が彼女を殺してでも止めるから。
破壊衝動に心が飲み込まれるタイムリミットまで、彼女は生きられるはずだった。
「ああ、そうか……」
そのタイムリミットが今来たのだ。
ならば要は、約束通り彼女を殺さなければならない。
「そんなこと、出来るわけないじゃないか……」
分かっていたことなのに、要は拳が握られなかった。
触手は広がっていく。
莉子から切り離された触手が、一個の生き物のように単独で破壊行動を始めた。
それを見て、要は悟ってしまう。
彼女をこのままにしておけば、甚大な被害が出る。
多くの人が死ぬ。
これはきっと、莉子がずっと一人で抱えていた絶望だった。
自分のせいで誰かが死ぬ。沢山の人が死ぬ。
それがどれだけ彼女を不安にさせていたか、想像するだけで恐ろしい。
「止めなきゃ……」
莉子が誰かを殺す結末なんて、きっと彼女だって望んじゃないない。
要が止めなければならなかった。
でも、どうやって……。
「手遅れになる前に……」
殺してあげないと。
要のヒーローとして成長してきた部分が、そう判断した。
そして、完成されたヒーローとして、要は成すべきことを行った。
拳を振るう。
広がっていこうとする触手を、一匹たりと逃さずに殴り殺した。
広がろうとする触手を殴り、千切り、強引に抑えこむ。
渾身の拳とその衝撃波で、触手共を撒き散らしながら間引いていった。
瞬く間に触手はその体積を小さくし、ついには人型の中心部を残すのみとなる。
触手の中心を掴んで、要は跳んだ。
崩れたビルの瓦礫の上に降り立って、単独行動を始めた触手たちを見下ろす。
彼女を殺して、これらの動きが止まればいいが、もし止まらないならあれらを殺しに行かないといけない。
拳を握りしめる。
どこに打ち込むか迷った。
出来るだけ、苦しめたくはなかった。
手が震えていた。
寒くなんかないのに、奥歯がカチカチ鳴った。
要は怯えているのだろうか。
分からない。でも、彼女は――。
「殺さないと、いけないんだ……!」
自分に言い聞かせる。
要は、拳を振り抜いた。
街に放たれた触手達が、行動を停止する。
要の拳は彼女の心臓目掛け振り下ろされ――既ところ
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