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ウラギリモノの英雄譚
シュウアク――英雄譚ノ始マリ
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う自分を許すことが出来ない!」
「許せなかったらどうするん? ……だだをこねたって、状況は変わらんよ」
 要は立ち上がる。
 満身創痍。それでも、守るべきもののために、前を見据えて立ち上がった。

「あなたを倒します」
 要の迷いが消える。
 拳は強く握りしめた。
「分かった。上手くいかんでも、自分を責めちゃいかんよ」
 仮面の向こうで、莉子が笑っているような気がした。
 そして要は戦いの意思を示すように、この言葉を口にした。
「変身――」
 大地の龍脈(りゅうみゃく)から光り輝く粒子の形をした英気(えいき)があふれ出す。
 それらは要の体にまとわりついて、ヒーロースーツの形を成した。
 漆黒のマント。手には、黒のグローブ。真っ黒なこの姿が、要のヒーローとしての形だった。
 変身と同時に、体の痛みが消えていく。
 同時に、視界がブラックアウトした。
 肌寒さを感じさせていた空気の感触も、口の中の血の味も、風の吹く音も、土埃の匂いも、何もかもが感じられなくなる。
 同時に、要の目の前に幼い自分の幻想が現れた。
 要が地面を踏みしめる。

「いきます」
 そう宣言し、要が一歩踏み出した。
 思えば、ここ数日で要は『変身』して戦うことが増えていた。
 一度目は試験。
 二度目は馬頭の怪人を相手にした時。
 頭の中の想像だけを頼りに拳を振るった。
 今回は前とは状況が違う。相手は動かない足場ではないし、目の見えない要の代わりに怪人を転がしてくれる仲間もいない。
 本来であれば、動く標的を相手に変身して戦うことなんて出来なかっただろう。
 だが、相手は莉子だ。
 莉子とはこの数日間の間に何度も手合わせをした。
 彼女の動きのパターンは、既に要の頭の中に入っていた。
 記憶に残っている莉子の姿を頭の中でイメージする。

 イメージの中の莉子は、変身した要に対してまず牽制(けんせい)するような攻撃を打ってくる。
 (かわ)すまでもなかったが、要はあえて(かわ)した。
 そして走るのではなく、一歩一歩踏みしめるように要が前に踏み出す。
 要の武器は拳だ。接近しないと攻撃のしようがない。
 それを理解している莉子は、要を後ろに押しやるような打撃を打ち込んでくる。
 要はそれを全身で受け止めた。足を踏ん張って、出来るだけ自分の位置をずらされないように抵抗する。もしかしたら、体は痛みを感じるかもしれないが気にすることはない。変身後の打たれ強さなら、莉子の攻撃にも十分に耐えれるだろう。
 莉子は要の弱点を探るような攻撃に切り替えてくる。
 要は顔の前に手をかざし、顔面を(かば)った。
 あと一歩で莉子に手が届く所まで歩く。莉子が跳躍(ちょうやく)する。飛ぶ位置は、要の右手か左手か。恐らく右手だ
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