シュウアク――英雄譚ノ始マリ
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
う自分を許すことが出来ない!」
「許せなかったらどうするん? ……だだをこねたって、状況は変わらんよ」
要は立ち上がる。
満身創痍。それでも、守るべきもののために、前を見据えて立ち上がった。
「あなたを倒します」
要の迷いが消える。
拳は強く握りしめた。
「分かった。上手くいかんでも、自分を責めちゃいかんよ」
仮面の向こうで、莉子が笑っているような気がした。
そして要は戦いの意思を示すように、この言葉を口にした。
「変身――」
大地の龍脈から光り輝く粒子の形をした英気があふれ出す。
それらは要の体にまとわりついて、ヒーロースーツの形を成した。
漆黒のマント。手には、黒のグローブ。真っ黒なこの姿が、要のヒーローとしての形だった。
変身と同時に、体の痛みが消えていく。
同時に、視界がブラックアウトした。
肌寒さを感じさせていた空気の感触も、口の中の血の味も、風の吹く音も、土埃の匂いも、何もかもが感じられなくなる。
同時に、要の目の前に幼い自分の幻想が現れた。
要が地面を踏みしめる。
「いきます」
そう宣言し、要が一歩踏み出した。
思えば、ここ数日で要は『変身』して戦うことが増えていた。
一度目は試験。
二度目は馬頭の怪人を相手にした時。
頭の中の想像だけを頼りに拳を振るった。
今回は前とは状況が違う。相手は動かない足場ではないし、目の見えない要の代わりに怪人を転がしてくれる仲間もいない。
本来であれば、動く標的を相手に変身して戦うことなんて出来なかっただろう。
だが、相手は莉子だ。
莉子とはこの数日間の間に何度も手合わせをした。
彼女の動きのパターンは、既に要の頭の中に入っていた。
記憶に残っている莉子の姿を頭の中でイメージする。
イメージの中の莉子は、変身した要に対してまず牽制するような攻撃を打ってくる。
躱すまでもなかったが、要はあえて躱した。
そして走るのではなく、一歩一歩踏みしめるように要が前に踏み出す。
要の武器は拳だ。接近しないと攻撃のしようがない。
それを理解している莉子は、要を後ろに押しやるような打撃を打ち込んでくる。
要はそれを全身で受け止めた。足を踏ん張って、出来るだけ自分の位置をずらされないように抵抗する。もしかしたら、体は痛みを感じるかもしれないが気にすることはない。変身後の打たれ強さなら、莉子の攻撃にも十分に耐えれるだろう。
莉子は要の弱点を探るような攻撃に切り替えてくる。
要は顔の前に手をかざし、顔面を庇った。
あと一歩で莉子に手が届く所まで歩く。莉子が跳躍する。飛ぶ位置は、要の右手か左手か。恐らく右手だ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ