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ウラギリモノの英雄譚
カイソウ――ダカラ、彼女ハ生キレタ
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トに入っていたことを除けば、彼女は普通の女の子だった。
 十三歳の春までは――。


 突然訪れた体の異変。
 ――わたしは、怪人だった。
 初めて『変態』したのは、四年前。
 気が付くとわたしは、全身に触手が巻き付いた人型の怪人になっていた。
 壊せ。壊せ。壊せ。
 胸の中で誰かが叫んでいる。これが怪人の本能である破壊衝動(はかいしょうどう)なのだと、後から知った。
 駆けつけたヒーロー達はわたしを退治しようとする。
 だけど、ヒーローはわたしを退治できなかった。それだけわたしは強力な怪人だった。
 幾人ものヒーローがわたしを殺しに来た。
 わたしは生きながらえるために必死に異形の腕を振るった。
 相手は自分を殺そうとしているのだ。ならば、わたしが反撃するのは悪いことじゃない。
 そう思っていた。
 だけど、途中から……わたしはヒーローを壊すのを楽しいと思うようになっていた。
 心まで怪人になっている自分に、絶望した。
 自分は死ななければいけない。
 そう思った。
 でも、死ぬのは怖い。

 逃げ延びた先で、わたしは幾子(いくこ)さんと出会う。
 彼女はわたしを駆除するために用意されたヒーローだ。
 強い。彼女はとても強い。
 彼女の振るう槍は、わたしの触手を容赦なく切り裂く。
 だけど、わたしよりは少しだけ弱いかもしれない。
 それでも、わたしが何とか破壊衝動を(こら)えて戦えば、幾子さんはわたしを殺すことができそうだった。
「驚いた。どうやら手心を加えられているみたいだね。怪人に手加減されるのは初めてだよ」
 幾子さんは、不思議な話し方をする女性だった。
 彼女の槍が動きを止める。
 どうして止めてしまうのか。

「……早く……今の内に……」
 胸の奥から破壊衝動が湧き上がってくる。
 孤児院の優しい先生、学校の友達。わたしには大事なものがいっぱいあった。
 このままでは自分がそれらを壊してしまう。それだけがただ怖かった。
 だから、その前に終わらせて欲しかった。

「おや。君は怪人のくせに口がきけるのかい?」
 彼女が槍を下ろしてしまう。
 何故、戦闘を中断させてしまうのだろうか。
 このままではわたしはまた……。
「っ」
 思わずわたしは思いっきり触手を振り下ろしてしまった。
 いけない。
 直撃を受けた彼女は、紙風船みたいに吹き飛んで壁に叩き付けられた。
「おっと……やっぱり手加減してたんじゃないか。いきなり本気を出すなんて、何か気に障ったかい?」
 良かった。まだ生きている。
 彼女は槍を低く構える。
「遠慮しないで本気でおいで。君の攻撃ぐらい、何とかいなしてみせるからさ」
 幾子さんがそう言う。
 戦闘が続き、わたしは何度も本気を出して
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