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ウラギリモノの英雄譚
テンキ――仮面ノ怪人ノ正体
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瞬く間にやられてしまったヒーロー達の体が転がっていく。
「ねぇ、要くん……こういう場合、ヒーローやったら何するんかな?」
 動いているヒーローはもういない。
 皆、痛みに身悶えしながら地に伏していた。

 弱々しく膝をついていた里里を、莉子の触手が持ち上げた。
「うっ……」
 回復が追いついていない里里は、動き出すことが出来ない。
「この子は預かっていく。要くん、初めて会ったあの場所で待ってるよ……」

 里里を取り返さなければ。そう思った。
 だが、要は頭の中で考えるばかりで、動き出すことができない。
 莉子が仮面の怪人だった現実を、心が受け入れられなかった。
「ヒーローだったら、どうすればいいか分かるよね?」
 それだけ言い残し、莉子が跳躍(ちょうやく)する。
 ヒーローの上を飛び越えて、開け放たれた入り口から莉子が去っていく。

 要はただそれを呆然(ぼうぜん)と見送ることしかできなかった。
 いつの間にか、外では雨が降っていた。

 濁りきった空に、莉子が消えていく。

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