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ウラギリモノの英雄譚
サイシュウシケン――夢ノ結末
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、槍の先端は要の脇腹に打ち付けられた。
「ギィンッ」
 要の体に突き刺さるかに思えた槍が、震えて悲鳴を上げる。
 要の体が硬すぎて、槍が突き刺さることが出来なかったのだ。
「おっ!?」
 目をむく槍使いのあご目掛け、要は拳を振り上げた。

 変身しているとはいえ、相手は人間だ。ある程度力加減はしないといけない。
 もしかしたら、避けられるかもしれないという懸念もあったが、試験で相手に大怪我をさせるわけにはいかなかった。
 世界がスローモーションに感じる。
 要の不安をよそに、拳は完全に試験官のあごを捉えていた。
 ここから避けることは不可能だ。
 防ぐにも、小回りの効かない槍では間に合わないだろう。
(――勝った)
 要が確信する。
 視界が完全に消えてしまう直前だった。

 朝や昼休みなど、時間のない時に限って襲い掛かってくる師匠のおかげで、短期決戦への心構えが出来上がっていた。
 この拳が当たれば、雌雄は決する。
 そう思われた。
「チィっ――」
 しかし、あろうことか試験官は槍を投げ捨て、要の攻撃に対する防御を固めたのだ。
 要の一撃は、わずかに逸らされてしまう。
(しまった――)
 要の拳は逸れながらも、直撃した。だが、相手の目から闘志が消えきっていない。
(仕留めきれていない。次の攻撃を……)
 そこで要の五感が完全に働かなくなった。

 世界が、閉ざされる。
 前後不惑(ぜんごふわく)の真っ黒な世界に閉じ込められ、またいつもの様に耳を塞いで(ひざ)を抱えた幼い自分が、目の前に現れた。

(くそっ――)
 苦し紛れに手を振り回すことを考える。
 当たっても外れても、要には分からない。
(一か八か……当たれ!)
 そう思って考えなおす。要は今変身をしている。下手をすれば、人を殺してしまえるかもしれない力を振るっているのだ。
 それは闇雲(やみくも)に振り回して良いものではない。

 では、どうすればいい。
 打たれ強さに物を言わせて、相手を抑えこむか。
 何も見えず何も感じない世界の中で、闇雲に手を伸ばし、宙を掻く。
 何かを掴んでいるのか、それとも触れることすら出来ていないのか、それさえも分からない。
 見えるのは、目の前の……何もかもを拒絶するようにして縮こまっている幼い自分の姿だけだった。

 要にはもう、試合が終わっているのかどうかさえも分からない……。

(何でだよ……)
 幼い自分を見下ろす。
(君がそうやって、何もかも塞ぎこんでしまうから……僕は戦えないんだろう?)
 歯がゆかった。
(いつになったら君は、目を開けてくれるんだよ……)
 勿論、幼い要は返事などしない。
 彼は要の精神が創りだした幻想だ。
 だけど、要が戦えないのは
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