クンレン――英雄ノ義務
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台所に入ると、手に持っていた風呂包みを机の上に置いた。
「ご飯持って来たけん一緒に食べよう」
そう言って包みを広げる。中身は使い捨てのお弁当箱で透明なプラスチックの蓋の下に真っ赤なエビチリとご飯がパンパンに詰め込まれていた。
「飯……作ってきてくれたんですか?」
「師匠やけんね。弟子の体調管理も仕事のひとつよ。あはー」
ドヤ顔の莉子。
「あ、ありがとうございます……」
突然の来訪には驚いたが、食事を用意してくれたことに、素直にお礼を言おうとしたところで。
「おらぁ!」
ガチの拳が要の鼻の下を抉った。
「んぐっ」
喋っている途中だったので、盛大に口の中を噛んだ。
切れた唇から血がどくどくと流れ出す。
「な……何するんですか……」
「食事の前に組手しよう。組手!」
「は?」
そして莉子は返事も待たずに殴りかかってきた。
そして組手が終わり、朝食。
「そんな氷で冷やさなくてもいいじゃん。おおげさやねー」
「こんなに顔を腫らして学校に行ったら、周りがびっくりするんですよ!」
「あ、学校行くんやね。休んで組手せん?」
「しません」
「ほらほら、そんなに怒らんといて。ほら、エビチリ食べよう。タンパク質タンパク質」
促され、要がエビチリを口に運ぶ。
「辛っ!」
「カプサイシンは新陳代謝を上げるけんね!」
「にしても辛すぎです。どれだけトウガラシ入れたんですか!」
「辛さに定評のある香川本鷹を惜しみなくっ。辛すぎた? まぁ、薬やと思って食べまい」
満面の笑みの莉子が、要の口にエビチリを押し込む。
香川本鷹のピリリとした上質な辛さが、口の中の傷に物凄くしみた。
朝からひどい目に合った。
きっと家に帰っても彼女に付き合わされることになるのだろう。
学校だけが要の安らぎの場所だ。
そう思っていた。
『要くん! 昼休みに組手しよう!
莉子』
三限目の授業の後に、携帯に入っていたメールだ。
外に来いということだろうか? だが、要の通う英明高校では、休み時間に校外に出ることが禁止されている。
その旨をメールで返していたのだが、返事はなかった。
諦めたのかと思ったが、あろうことか莉子は学生に変装して昼休みの校舎に侵入してきた。
「やり過ぎじゃないですか?」
「昼休みは短いよっ。さぁ、やろう!」
拳を構えた莉子が殴りかかってきた。
勿論、家に帰っても組手が待っていた。
組手というか、莉子に遠慮がないため、ほとんど殴り合いみたいになっている。
翌朝。
莉子の襲撃を避けるため、要は早めに家を出た。
「ふぅ……」
学校最寄りの駅で降りて、何とか莉子
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