デシイリ――紫雲幾子ノ帰還
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りしないかい?」
「そんな訳ないやん。わたしは要くんのファンってだけやってー」
「ははっ、そうだったそうだった。いや、失礼。もしかして、気に障ったかい?」
そして、声を揃えて笑う二人。
すると、幾子が要の方を見た。
「……ボーっと突っ立ってしてどうしたんだい? 何か気に障ったかい?」
「知り合いなの?」
色々と言いたいことはあったが、まずそれについて聞いた。
「ああ。この三年間、僕はずっと莉子君の傍にいたんだよ」
「え? 何で?」
「ちょっと事情があってね……それより、二人はもう知り合いのかい?」
「うん、仲良しっ」
莉子は即答したが、要は首を横に振った。
「最近会ったばかりで、まだどういう人なのか混乱してる」
「うん、そうだろうね」
幾子が頷く。
「では、お茶が来たら彼女を紹介しよう。要」
「分かったよ」
要は台所に赴き、熱いお茶を用意すると居間のテーブルに並べた。
「これでいい?」
幾子の隣に要が腰を下ろす。
「うむ。……やはり誰かに淹れてもらったほうが美味しいな。さて」
お茶をすすった幾子が、顔を上げる。
「彼女は緋山 莉子(ひやま りこ)。彼女が何者か、強いて言うならそうだなぁ……僕の弟子、かな」
「弟子?」
「つまり、要や里里君の妹弟子だね。この三年間、彼女には私の技術の全てを教えこんだつもりだよ」
つまり、幾子は失踪している三年間の間、彼女の紫雲の格闘技を教え込んでいたらしい。
それで彼女は試験の折に、紫雲流の型を披露していたのか。
「妹弟子ではあるが、この三年で、僕の教えは既に要より前の段階に進んでいる。要、変身した時に異常が起こる君の体質については、克服できたかな?」
「…………」
「そうかい。大変な時期に傍に居れなくて悪かったね」
要の様子から、幾子は要の現状を察したらしい。
「ヒーロー認定試験に、期限があるのは知っているね? 要がヒーロー認定試験の二次試験に合格したのは五年前だから、君は今年ヒーロー認定試験に合格できなければ、規則上、もう二度とヒーローになることはできなくなる」
幾子が突き付けるように言う。
「年齢制限ではなく、合格後の期限があるというのも変な話だが、チャンスをモノにする技量というのもヒーローには求められる要素だからね」
分かっていたことだ。要にとって、今年は最後のチャンスだった。分かった上で、諦めた。納得していた。
「姿を消していた僕が言うことじゃないかもしれないが、君の師匠として、僕は問わないといけない。要。――本当に君は、ヒーローになれなくて良いんだね?」
ヒーローになりたくないのか? ではない。
問われているのは、なれなく
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