ステミ――莉子ノ二次試験
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行い始めた。
「ほぇー……やっぱ生で見ると迫力あるなぁ」
正宗が関心していた。
「皆叫んでるけど、声の大きさとかも審査に関係有るのか?」
「いや、絶対に声を出さないといけないなんてことはないよ」
「要の目から見てどうなんだ? 誰が落ちて誰が受かりそうとか分かるのか?」
「うーん……」
ヒーローの志願者たちには、格闘技の有段者が殆どだ。
はっきり言って、型だけなら皆が十分な技量を持っている。
「型だけじゃ、誰が受かるとかは分からないかな。重要なのはこの後にある試合形式の実技だからね」
型の時点では、それほど志願者達の間で差はつかない。
ルーチンワークのように繰り返される型の動作に、観客達の目にも少し眠気と退屈の色が浮かび始めていた。
「ん? なぁ、おい。あれ」
ふと、正宗が控えの志願者たちを見て、何かに気づいたように声を上げた。
「緋山さんじゃね?」
「え?」
道着や袴など、格闘技を連想させる服装の志願者達の中で、唯一莉子だけは普通のジャージを着ていた。
長い髪を後ろで束ね、だらしなくジャージのファスナーを全開にした莉子の姿は、休日にマラソンを嗜むOLの様にも見える。
志願者の群れから、莉子が歩み出てきた。
「試験番号 千六百十一(1161)。緋山莉子っ!」
まるで観客席まで届かせるような大声で、名乗りを上げる。
そして一呼吸も置くことなく、流れるような動作で型に入った。
「おお……っ」
しばらく莉子の演舞が続き、隣で正宗が感嘆の声を上げた。
莉子を見つめる審査員の目も、それまでの志願者を見る目と違っている。見るからに目が活き活きとしていた。
それぐらい、彼女の技術は他を圧倒していた。
彼女の型を見るのは二度目だ。
確かに今見ても、基礎の高さが見て伺える。
しかし、要にはそれよりも気になることが有った。
「何で、彼女がうちの流派の型を知ってるんだ……?」
現在莉子が用いている型は、要の家で教えている紫雲流ものだった。
少しビックリしたが、そういえば彼女は要の住所や携帯電話の番号について知っていた。
もしかしたら、どこかで見て盗まれたのかもしれない。
「減るもんじゃないし、いいか……」
要はそう結論づけた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
全志願者の型が終了し、続いて組手が始まる。
組手の相手は、試験官。彼らは空手や柔道など格闘技の有段者だ。
各々得意とする格闘技を予め申請して、それぞれの試験官に相手をしてもらう。
平均年齢が二十代前半のヒーロー志願者達の中が試験官に勝つことはまず
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