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ウラギリモノの英雄譚
チケット――誘イ
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、待って。やっぱり聞きたくないです」
「あら、そう?」
 要のイ……何だろうか?
 要のインスピレーションに火をつける? そんな感覚的な何かであって欲しい。

「ははは。要の(イエ)とか言い出されたらどうしようかと思ったわ」
「言うなよ正宗! 黙ってろよ!」
「ちょ、何マジになってんだよ。冗談だろ?」
 冗談であれば何も問題はない。
 だが、要の目の前の女は、訳の分からない理由で要の家まで来ている。
 彼女の行動原理が読めない以上、この問題を冗談と思い軽く扱うことがためらわれた。
「それじゃあ、試合に来てくれるかなっ?」
「…………いいともー……」
(こころよ)く了承してくれて、師匠嬉しいよ」

「それじゃあ、今週末は三人で試合観戦だな、要!」
「違う違う。観に行くのは二人だけ。チケットも二枚しか持ってないし、わたしは当日用事があるから」
「…………ん? それはどういうことですか?」
「おっと、もうこんな時間……わたしもう帰らないと。それじゃあ、中生(ナカオ)くん。当日はよろしくねー」
 莉子がそそくさと更衣室に退散し、三秒と待たずに元の制服に着替えて出てきた。
「要くん。週末、絶対行くこと。来ないとひどいけんねっ」
 捨て台詞の様にそう言い残し、莉子は嵐のように消えていった。



「え? ……どういうこと……?」
 ポカーンとしていた正宗に、とりあえず現状の結論を伝えることにした。

「週末は、僕と二人でデートだな。正宗」

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