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ウラギリモノの英雄譚
テイアン――緋山莉子トノ遭遇
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する。
 流石の要も少女の発言に腹が立ってきた。
「だいたい、元はといえばあなたが木から落ちたから助けたんじゃないですか!」

 要が踏み込む。
 少女が掌底を打ち込む虚をついて、彼女の背後を取った。

「っ、へぇ……」
 少女は要の返し技に、驚いたような顔をした後に、感心したように頷く。
 少女の目から攻撃の意思が消えていく。要も肩の力を抜いた。
「要くん。さっきの話の続き……」
「さっきの話? まだ何か文句があるんですか?」
「違うって。そこじゃなくて。……君をヒーローにしてあげるって言うたやん。その話」
 少女の目から敵意が消える。
 要も肩の力を抜いた。
 少女は振り返り、要の方を向く。

「君のことを、わたしがヒーローにしてあげる。其の第一段階としてやね」
 ニンマリと、少女が含み笑いを浮かべた。

「わたしの弟子になりまい」
 提案される。
 訳はわからない。
「いや、結構です」
 要は即答した。
「うんうん。わたしのところで修行をすればきっと……ええっ!? 断るん!?」
「残念ながら今回はご縁がなかったということで。貴殿の今後のご健勝とご活躍をお祈り……」
「就活のお祈りメールみたいな言葉を並べ立てないで! 何で断るん? え?」
 少女は心底意外そうな顔をしていた。

「常識的に考えて、知らない人にいきなり弟子入りを勧められたりしたら断るでしょう? だいたいあなた誰ですか?」
「え? わたしのこと知らんの?」
「もしかしてどこかでお会いしたことがありましたか?」
「いや、初対面やけど……」
「それでは、僕は失礼します」
 これ以上、彼女と関わるべきじゃない。
 そう判断した要は早足に彼女から離れていった。

「待って待って待って!」
 駆け足で回りこんできた彼女が、要の行く手を阻んだ。
「緋山 莉子(ヒヤマ リコ)。わたしの名前。今は要くんと同い年の十七歳だけど、学年的にはひとつ上のお姉さんになる。……あ、もうすぐ誕生日だから、覚えといて」
「そうですか」
 要が少女の脇を抜けて帰ろうとする。
「待ってって! 弟子になってくれんの?」
「なりません。ごめんなさい」

『弟子にならないか』
 プロヒーローで、要の師匠にもあたる要の実母が失踪して以来、要の将来性に目を付けていた他のヒーローから、こうして弟子入りを提案されることは度々あった。
 勿論、ヒーローになる夢を諦めている要は、その全ての申し出を断っている。

「悪いけど、僕はヒーローになるつもりなんてない。だから、プロのヒーローに弟子入りするつもりもないんです」
「わたしは、プロのヒーローじゃないよ」
「え……じゃあ、あんた何者?」
「一応、ヒーローの認定試験を受けたことはあるけど、まだ
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