デアイ――ソシテ、彼ハ彼女ト
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あの後、要の通報によって駆けつけた警察とヒーローについて事情を説明することになる。
ヒーローしか襲わないはずの仮面の怪人が民間人を襲った。
このことは公にとってもかなり衝撃的だったようで、要は仮面の怪人について延々と同じ話を述べ十人の相手にするはめになった。
今後は、仮面の怪人への対策も一層強化されるらしい。
事情聴取が終わる頃には既には、既に終電が終わっていた。
パトカーが要を家まで送ってくれることになったのだが、念の為にと二人の警察官に加え、プロのヒーローが一人、パトカーに同席していた。
プロのヒーローと言っても、常に変身しているわけではない。見てくれは、ジャージを着た二十代ぐらいの普通の男だ。
「後ろにも二人も乗せてると、まるで容疑者を護送しているみたいだね」
やけに明るい声で隣のヒーローが口走った。
自分は容疑者かよ、と要は思ったが、あえて口は出さないことにした。
「はは……」
前の警察官は乾いた笑いを返す。
「紫雲くん。君も災難だったね。まさか怪人に襲われるなんて」
隣のヒーローが話しかけてくる。
彼に対し名乗った記憶はなかったのだが、苗字を口にされた。
何十人にも話をした調書の中で要の名前を知られたのかもしれない。
「ヒーローしか襲わないはずの怪人が民間人を襲った。しかもその怪人はヒーローを何人も病院送りにしている強力な怪人だってんだから、うちらの業界は大騒ぎさ」
「ええ。とんでもない目に合いました」
「しかし、仮面の怪人は本当に民間人を襲うようになったのかな」
ヒーローの目が、要を見る。
「……というと?」
「怪人にとって、紫雲君が一般人の括りに入るのだろうか? と、疑問に思ってるんだよ」
「どういう意味ですか?」
「紫雲 要(しうん かなめ)くん。君は俺達の業界じゃちょっとした有名人さ。なにせ、君がヒーローになれば怪人は絶滅するとまで言われていた天才だったんだからね。……いや、昔のように神童と呼んだほうが一般的なのかな?」
「……やめて下さい、昔の話です」
「何人もヒーローを返り討ちにしている件の怪人を相手取っても、君は傷一つ負っていないじゃないか。こんな君が、果たして一般人と言えるのかな?」
「買いかぶり過ぎですよ……」
「どうして君は認定試験を受けなくなってしまったんだい? 君なら、合格は間違いなかっただろうに……」
要はヒーローの話を煩わしく思いながら、「ええ……」「はぁ……」と相槌を繰り返した。
そうこうしている間にパトカーは要の家に着く。
後半、隣のヒーローが何を話していたのかは覚えていない。要は、そそくさとパトカーを降りた。
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