ソウグウ――仮面ノ怪人
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危険はないなどという安易な考えを払拭する。
本物の怪人を目にするのは、これが二度目だ。そこに在るだけで何かを壊す、怪人独特のプレッシャーを肌がヒシヒシと感じていた。
その時、伸びた触手が首に巻き付いてきた。
咄嗟に手で首を庇う。
「っ……しまったっ」
庇った拍子にスマートフォンを落としてしまった。
だが、そんなことに気を取られている場合ではない。
巻き付いてきた触手が首を締めあげてくる。
すさまじい力だった。
何とか振り払おうと腕に力を込めたところで、要の体がふわりと浮いた。
「嘘だろ……くそっ!」
怪人の触手は、要の体をいとも簡単に持ち上げ、川の中へと投げ飛ばした。
殆ど水底がむき出しの浅い川に投げ込まれ、水底の小石で肌を切った。
全身が鈍い痛みを訴えたが、ここで寝ていては格好の的だ。
要は即座に立ち上がった。
怪人が川の中に飛び込んでくる。
干上がった川で両者が対峙する。
まるで試合をするかの如く、怪人と要が見合っていた。
「ヒーローしか襲わないんじゃなかったのか?」
怪人は人間の言葉を解したりはしない。
現在、要と怪人の距離は僅か十メートルも無い。
仮面の怪人のリーチは少なくとも三十メートル以上、一目散に逃げ出しても、背中から攻撃されるのがオチだろう。
目はそらせない。
だが、相手の触手を目で追えないことはない。
「一発一発を躱しつつ、後退……」
(大丈夫、それぐらいなら出来る)
要は自分に言い聞かせ、戦う意志を示すように構えた。
しかし。
仮面の怪人のマントの下から、無数の触手がその姿を現した。
「嘘だろ……一本じゃないのかよ」
その一本一本は長く太い。あれだけの触手がどうやってあのマントの中に隠れていたのか。
暴力の質量が露わにされ、要は自分の浅慮を戒める。
相手はプロのヒーローを何人も病院送りにしている怪人だ。ヒーローにすらなれない自分が対処できるような相手ではなかった。
――どうすればいい?
思考は無価値だった。
要は、悲鳴を上げる間も無く、無数の触手に絡め取られて消えていった。
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