暁 〜小説投稿サイト〜
ウラギリモノの英雄譚
ソウグウ――仮面ノ怪人
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

 危険はないなどという安易な考えを払拭する。
 本物の怪人を目にするのは、これが二度目だ。そこに在るだけで何かを壊す、怪人独特のプレッシャーを肌がヒシヒシと感じていた。
 その時、伸びた触手が首に巻き付いてきた。
 咄嗟に手で首を庇う。
「っ……しまったっ」
 庇った拍子にスマートフォンを落としてしまった。
 だが、そんなことに気を取られている場合ではない。
 巻き付いてきた触手が首を締めあげてくる。
 すさまじい力だった。
 何とか振り払おうと腕に力を込めたところで、要の体がふわりと浮いた。
「嘘だろ……くそっ!」
 怪人の触手は、要の体をいとも簡単に持ち上げ、川の中へと投げ飛ばした。
 殆ど水底がむき出しの浅い川に投げ込まれ、水底の小石で肌を切った。
 全身が鈍い痛みを訴えたが、ここで寝ていては格好の的だ。
 要は即座に立ち上がった。
 怪人が川の中に飛び込んでくる。
 干上がった川で両者が対峙する。
 まるで試合をするかの如く、怪人と要が見合っていた。
「ヒーローしか襲わないんじゃなかったのか?」
 怪人は人間の言葉を解したりはしない。
 現在、要と怪人の距離は僅か十メートルも無い。
 仮面の怪人のリーチは少なくとも三十メートル以上、一目散に逃げ出しても、背中から攻撃されるのがオチだろう。
 目はそらせない。
 だが、相手の触手を目で追えないことはない。
「一発一発を躱しつつ、後退……」
(大丈夫、それぐらいなら出来る)
 要は自分に言い聞かせ、戦う意志を示すように構えた。
 しかし。
 仮面の怪人のマントの下から、無数の触手がその姿を現した。
「嘘だろ……一本じゃないのかよ」
 その一本一本は長く太い。あれだけの触手がどうやってあのマントの中に隠れていたのか。

 暴力の質量が露わにされ、要は自分の浅慮を戒める。
 相手はプロのヒーローを何人も病院送りにしている怪人だ。ヒーローにすらなれない自分が対処できるような相手ではなかった。
 ――どうすればいい?
 思考は無価値だった。
 要は、悲鳴を上げる間も無く、無数の触手に絡め取られて消えていった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ