ソウグウ――仮面ノ怪人
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が実践形式で戦う試験だ。ヒーローの超人的な力のぶつかり合いが観れる機会は多くはない。この最終試験は、一般客にも有料公開されるちょっとしたお祭りだった。
本年度の試験は要の地元で行われるということで、県の方でも幾らかのPRをしているらしい。
「そういえば今年は大串半島ですね」
「ねぇー。私の時は北海道まで行ったのに……」
「…………」
今回の試験の応募締め切りは、今週の末だった。
「……ほら、行こう行こう」
思わずポスターをじっと眺めてしまった要の背中を、里里が押した。
里里の家まではすぐに着いた。
「上がって麦茶でも飲んでいく? 沸かしてから八日目だけど」
「お構い無く」
里里の誘いを断って、要が来た道を引き返す。
地方の電車は本数も少ない。瓦町駅から再び最寄り駅へ戻る頃には、すっかり人も少なくなってしまった。
歩道のない川沿いの道路を歩いて行く。
車も通らないのは珍しかった。
ふと、目の前を何かが横切った。
「猫?」
黒い子猫だ。
要はその猫の動きを目で追って、道の先へ視線を向けた。
そこに、――仮面の怪人が立っていた。
「…………」
あれは何時からあそこに立っていたのだろうか。
仮面の怪人――顔の全面を覆う白い無個性な仮面、フード付きの白いマントで全身を覆っており、あれが男か女かは分からない。
ニュースで見聞きした仮面の怪人と全く合致する人物が、目の前に立っていた。
「仮面の……怪人?」
要が身構える。
仮面の怪人、仮面の向こうの瞳は確かに要を見ていた。
ニュースに触発された悪ふざけの偽物か、それとも本物の仮面の怪人か。
どちらにせよ焦る必要はないと、要は思った。
偽物であれば、恐れる必要はない。一般人の愉快犯に負ける要ではないからだ。
仮に本物であったとしても、要はヒーローではない。ヒーローしか襲わないこの怪人が要を襲うことは無いはずだ。
要に危険はない。
後ずさりながらスマートフォンを取り出す。
パスコードでロックを解除したところで、緊急電話はロック解除が必要なかったことを思い出す。
落ち着け。言い聞かせて電話アプリを起動した。要がスマートフォンを耳に当てる。
怪人のマントが僅かにめくれ上がったように見えた。
突如、今まで感じたことがない悪寒に全身が包まれ、要は本能的に身を縮めた。
身を縮めた要の頭を掠め、真っ黒な触手が突き抜けていった。
この触手はどこから飛んできた?
要は仮面の怪人に目を向ける。
仮面の怪人までの距離はゆうに三十メートル。めくれ上がったマントの下から、ペットボトル程の太さの触手が一直線に伸びていた。
怪人と目が合う。
めくれ上がったマントの下には、無数の触手が蠢いていた。
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